公開日:2024年05月09日
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見た目はちょっと怖いけれど、知り合ってみると意外とやさしかったみたいなお友達いませんか?虫の世界でも同じようなことが言えるかも知れません。今回は伊丹市内でも良く見かけるキムネクマバチを紹介します。
黒くて大きな体、ブンブンと大きな羽音を立てて飛ぶキムネクマバチ(以降クマバチ)はハチ目ミツバチ科の昆虫です。漢字で書くと黄胸熊蜂。地域によってはクマンバチと呼ぶところもあります。春先、サクラの咲く頃に冬越しから目覚め、よく見かけるようになります。晴れた日には空中に静止するように飛び、仲間同士で追いかけっこするような様子がみられます。学校や公園などに植栽されるフジやエゴノキ、アベリアなどの花、河川敷や花壇に咲く様々な花に蜜や花粉を求めてやってきます。
ハチ=刺す・危険というイメージから、クマバチが飛んでいる姿を見ただけで驚き逃げてしまう方もいるでしょう。巣を過度に刺激したり虫自体を触ったりすると刺されますが、スズメバチやアシナガバチなど刺傷被害の多いハチに比べるとクマバチはとてもおとなしいハチです。ちなみにハチの仲間で刺すのはメスのみで、オスは針がなく刺すことはありません。
花にやってきているクマバチがいたら、じっくり観察してみましょう。大きな体ですが器用に花にとまり花蜜を吸う様子、花から花へ飛んで移動し、後ろ脚に黄色い花粉の塊をつけている姿が観察できるでしょう。多くの花は昆虫に蜜や花粉をあたえる代わりに、おしべの花粉を同種の花のめしべに運んでもらい、受粉を助けてもらっています。クマバチは受粉を助けることもあれば、蜜だけ盗み花粉を運ばないこともあります。
さて空中で静止飛行をしているクマバチは何をしているのでしょう?大半は縄張りを張ってメスを待っているオスです。オス同士は追いかけっこをするように縄張り争いをし、メスが近づいて来れば交尾をせまります。交尾を済ませたメスは、花粉と蜜を混ぜた特製の団子を巣の中に貯蔵し、卵を産んで次世代を残します。
クマバチの巣は枯れ枝の中にトンネルを掘って作られます。入り口は綺麗な丸い形、直径1cmほどです。大きなサクラやウメの木の枯れた枝、古い木造家屋の門柱や梁などにも作ることがあります。頑丈な大あごを使って上手にお家を作る(掘る)ことから英名carpenter(大工)beeです。トンネルの中に掘った木屑を塗り固めた小部屋を8個ほど作り、各部屋に収めた花粉団子に1つずつ産卵します。産み付けられた卵は花粉団子を食べ小部屋の中で蛹になりやがて羽化して成虫になります。
羽化した新成虫と親バチはしばらく同居することも知られています。内部にハチがいることを知らずに巣の入り口をふさいだり強い刺激を与えたりすると刺される場合もあるのでご注意を。巣穴をそっと観察するだけなら大丈夫。中から顔だけのぞかせる成虫、危険を感じたのかお尻で蓋をしてしまう成虫など微笑ましい姿も見せてくれることがあります。
最近タイワンタケクマバチという外来種が増えています。キムネクマバチと違い胸の部分が黄色でなく黒い、翅に虹色の光沢がある、枯れた竹(立ち枯れ、竹の柵、竹箒など)に丸い穴を開けて巣を作るのが特長です。餌資源をめぐってキムネクマバチと競合すること、胸部や腹部に共生させているダニ(巣内の花粉を食べたりクマバチの幼虫の排泄物などを食べる)がそれぞれ異なり外来の共生ダニが持ち込まれることによるキムネクマバチへの影響なども心配されています。竹を使った柵や竹箒は人の生活に身近で、巣があることに気づかず触ることで刺されることがあります。こちらもご注意を。
(伊丹市昆虫館 野本康太)
伊丹市昆虫館
伊丹市昆陽池3-1昆陽池公園内
TEL:072-785-3582
開館時間:9:30~16:30
休館日:火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日休)
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Written by 伊丹市昆虫館
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