コラム|幕末のビール復刻版で、江戸時代のおつまみをたのしむ夏の終わり

公開日:2022年08月25日

夏も終わりに近づいて少しだけ涼しくなりましたが、まだまだむし暑い日が続きますね。

暑い日はビールがおいしい。

ということで、コラムライターのショージさんから幕末に作られていたビールの復刻版をいただいたのです。

江戸時代といえば日本酒のイメージですが、実は幕末にはもうビールが醸造され、一部のひとびとの間で飲まれていたようです。

最初にビールが日本に輸入されたのは長崎の出島。

そこからのちに貿易が始まり、多くの外国人がいた横浜では日本人の間にも広まって盛んに飲まれるようになり、ビアホールもあったとか。

福沢諭吉も、著書『西洋衣食住』の中でビールについて、「其味至て苦けれど、胸膈を開く為に妙なり。亦人々の性分に由り、其苦き味を賞翫(しょうがん:物を珍重し、もてはやすこと)して飲む人も多し」と評しています。

日本で唯一現存しているちょんまげ姿の男の人がビールを飲んでいる写真があるのですが、この写真がすごくいい!

ガラスコップで兄の小花和重太郎(左)とビールを酌み交わす立石斧次郎(小花和平一郎氏 蔵)

ちょんまげの男の人の写真って「きりっ」または「むっ」としたような顔で写っているような印象がありますが、ビール瓶を傾けた男性からは、こちらに呼びかけてくる声が聞こえてきそう。

「おお、遅かったじゃないか。先にやってるぞ」

とか。こちらも汗を拭きながら横に座って、

「いやーごめん、出ようと思ったら呼び止められちゃってさ……(お店の人に向かって)すみませーん、こっちにもコップひとつお願いします〜」

と答えるのが想像できるような……。なんだか同じ職場の同僚みたいに親近感の湧くにっこり顔なんですよね。

こんな親しげな笑顔がこぼれるのも、ビールのおかげ。

というわけで、伊丹が誇る老舗の酒蔵、小西酒造から販売されている幕末のビール復刻版 幸民麦酒 をいただいてみることにしました!

これが日本人が初めて作ったビールの復刻版。

さっそくいただいてみると、最初は爽やかでフルーティな味が広がり、その後にこくのある苦味がきて、これはおいしい!

江戸時代のビールなんてどんな味なんだろう……とちょっとどきどきしながら飲んだのですが、最近人気のクラフトビールと言われても納得してしまうような爽やかな味わいで、夏にぴったりです。

大満足の復刻ビール。

せっかくなのでおつまみも江戸気分に!

当時の居酒屋メニューで特に人気のあったものを作ってみることにしました。

写真の右上から時計まわりに、まずは、豆腐の田楽。

田楽は当時、居酒屋メニューの定番中の定番だったようです。

理由は、さっと出てきて、何より安いから。とりあえずお酒と田楽!という感じでみんな頼んでいたようですね。

田楽茶屋という専門店まであったとか。歌川広重の有名な浮世絵シリーズ「東海道五拾三次」にも田楽茶屋の様子が出てきます。

歌川広重「東海道五拾三次 石部 目川ノ里」

よく見ると手前の人たちはみんな踊っているんですね。酔っ払って楽しくなっちゃったのかな。

わたしは田楽というと、懐石料理についてくるもの程度の気持ちしかなかったのですが、作ってみると人気もわかるほど、おつまみとして優秀!

赤味噌と白味噌がありますが、今回は関西風で白味噌を使い、木の芽はなかったので、山で採って冷凍しておいた山椒の実をつぶして合えてみました。

焼いた味噌がまったりして香ばしく、山椒がアクセントになってよいおつまみになりました。これはまた作ってみたいです。

次は茹でだこ。

たこは弥生時代から食べられていたという説もあり、日本人はとにかく昔からたこが大好き。

浮世絵にもたこを描いたものがいっぱいあるのですが、わたしのお気に入りはこれです。

歌川広重「東都名所 高輪二十六夜待遊興之図」

たこのコスプレ!なんて楽しそうなんでしょう……。

この絵は歌川広重の「東都名所 高輪二十六夜待遊興之図」です。現代にはないですが、旧暦の7月26日の月を待つお祭りなんですね。

江戸時代の料理本にもたこのレシピはいろいろ書いてあるのですが、今回はシンプルに茹でだこにしました。

茹でるだけというシンプルな料理法なだけに、はるか昔から日本人はこの味を味わっていたんだなあと感じられました。

最後は、ねぎま汁。

ねぎまと言うと焼き鳥のことかと思いますが、江戸時代のねぎまとは「ねぎ+まぐろ」のこと。この二つを一緒に煮たねぎま汁も居酒屋の定番だったようです。

おつゆの中で溶け出したまぐろの脂と焼いたねぎの味わいがマッチしていい感じ。飲んだ後のしめとしていただいてもいいかも。

江戸時代の居酒屋メニューを見ると、実にいろいろな食材を用いてお酒を楽しんでいたことがわかります。

歌川広景の「青物魚軍勢大合戦之図」という絵では、青物と魚類が大合戦を繰り広げています。

これどんな状況……?と思うのですが、一説では、安政のコレラ流行を受け、コレラにかかりやすい魚類がコレラにかかりにくい野菜に倒される構図だと言われているそう。

歌川広景「青物魚軍勢大合戦之図」

見えにくいのですが、左端にしっかりまぐろが!鎧と刀で戦っています。

大鰭鮪之助(おおひれまぐろのすけ)という名前がかわいい。まぐろのすけがんばれ〜!

さて、大人はビールとおつまみがあるのですが、江戸時代の子どもたちは?と思い調べてみると、冷やしあめが人気だったよう。

さっそくいかりスーパーで購入。

お花柄のワンカップに入って見た目も涼しげ。

息子には、江戸気分を出すために甚平を着てもらいました。

生姜の香りが結構するので、子どもには苦いかな?と思ったのですが、飲んでみるとすっきりとした甘い味で、息子もあっという間に飲んでしまいました。

これは暑いときにぴったりのおいしさかも!

幕末の復刻ビールとおつまみで、夏の終わりに江戸時代の味を満喫した夕方でした。

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