公開日:2022年12月21日
伊丹市立演劇ホール(アイホール)は、12月24日(土)と25日(日)、「地域とつくる舞台」シリーズの「伊丹の物語」プロジェクト リーディング公演『ビューティフル・サンデー』を上演いたします。
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「地域とつくる舞台」シリーズは、アイホールが2008年から取り組んでいるプロジェクトで、アーティストが地域の人々と一緒に舞台作品を創作する公演。
飲食店が会場になり料理とお芝居を楽しめる人気の企画『味わう舞台』もこのシリーズです。
「伊丹の物語」としては、2015年から2017年に3年かけて実施したプロジェクトの第二弾となり、5年ぶりに、リーディング公演『ビューティフル・サンデー』を上演します。
今回上演の『ビューティフル・サンデー』は、伊丹にまつわるエピソードや出来事を市民から聞き取り、伊丹の歴史や魅力の再発見により、新しい「伊丹の物語」を創作した公演。
構成・演出を務めるのは、小原延之さん。
音楽・演奏を担当するのは、伊丹の様々なイベントで活躍するおがわてつやさん。
劇作、出演には、伊丹市出身・在住の劇作家や俳優、アイホールの事業や講座出身者が集結。
市民への取材のほか作家自身の伊丹での思い出などもベースに、写真や生演奏とともに作品をリーディング上演します。
そもそも「リーディング公演」と普通の演劇とはどう違うのでしょうか?
今回の公演の見どころと一緒に、リーディング公演についてアイホール職員の大道みなみさんに伺ってみました。
リーディング公演では、上演本番でも台本を持ったままで読みながらセリフやお芝居をするんです。舞台の上で戯曲を読むので「リーディング」と言います。そこが普通のお芝居とはちょっと違うところですね。
リーディング、朗読劇というと、椅子に座ったままのものも多いのですが、今回の『ビューティフル・サンデー』では、動きのあるリーディング劇で、舞台の上を動き回るんですよ。だから思った以上に楽しいものになると予想しています。
伊丹を知っている方は「伊丹あるある」がたくさん出てくるので、絶対面白いと思います。伊丹を知らないひとには、伊丹の街やひとのことを知ってもらう機会になりますね。
元はアイホールの存続問題から「何か伊丹でつくろう」という発案で生まれた今回の公演です。伊丹出身の脚本家、役者で、3ヶ月以上かけて練習しています。
伊丹の場所の写真が舞台の背後に投影されるので、知らない方でもどんな場所かすぐわかると思いますよ。
自転車などの小道具や、衣装も見どころです。
当日は手話通訳の方が舞台通訳をしてくれるのですが、役者と一緒に舞台を歩き回るんです。通常は舞台の横で動かずに手話で伝える劇が多いので、そんなところも面白いと思いますね。
今回の公演は「動きのあるリーディング劇」ということで、どんな舞台になるのか、稽古の様子を少し見せていただきました。
役者の皆さん、演出家の方の声が響きます。緊張感!
リーディングと一緒に音楽も入ります。音楽はギターやウクレレの生演奏!
「伊丹オトラク」や「イタミ朝マルシェ」「鳴く虫と郷町」など伊丹の代表的なイベントのさまざまなシーンで活躍するおがわてつやさん。
役者の皆さんが台本を持って稽古を進めると、ときどき演出家の小原さんから、「ちょっと待って!」と指導が。
「じゃあこうしたらいいかな?」と話し合って何度か同じシーンを練習したり。
お酒に酔っ払う演技をする役者さんたちに「それじゃちょっと悪酔いだから、もっと楽しい感じで酔って」など小原さんから指導が入って、みんなで笑い合う場面もあり。
稽古場は緊張感がありながらわきあいあいとした雰囲気で、みんなで今回の公演を作ろうというパワーが満ちていました。
普通の演劇とは少し違うリーディング公演、今回の『ビューティフル・サンデー』について、公演を創るみなさんにお話をお伺いしました。
構成・演出の小原延之さんはこれまで数多くの作品を手がけられ、アイホールでも、多数の上演やアイフェス(AI・HALL中学高校演劇フェスティバル)などの事業・企画への関わりを持たれています。
小原延之さんプロフィール
劇作家・演出家。2002年〜2005年まで「劇団そとばこまち」代表を務める。退団後、フリーの劇作家・演出家として活動。
2006年からアイホールとの共同制作として3作品を発表。ほかに、アイホールのアウトリーチ事業や吹田メインシアター、大阪大学共同事業、高槻シニア劇団「千年団」などの演出・講師を担当。
(アイホール公演チラシより引用)
構成・演出より
今まで伊丹の子どもたちや市民の方たちとワークショップや戯曲講座で交流を続けてきました。子どもたちは演劇体験を学業や生活そのものに活かし、市民の方たちも舞台芸術を享受し、生きる糧にしておられます。そして出会った子どもたちの何人かは成長し、文化の担い手となり伊丹を支えようとしています。
この度、外部から特別にプロの方を呼び寄せることなく、伊丹を文化の土壌として育った方たちと一緒に「伊丹の物語」をつくることになりました。これはいわゆる、伊丹市民による伊丹市民のための創作劇ということになります。さまざまな地域に類似した市民劇はあると思われますが、長年、アイホールが育んできた専門性によって、一風変わった町の原風景が浮かび上がればいいなと思っています。
(アイホールウェブサイトより引用)
アイホールの劇場の専門性がまず一つ。それは会場としての素晴らしさと、リソースですね。
大道さん(アイホール職員※)のような担当者はどこに行ってもいない。どこかで「市民劇を作ってください」と言われたら「どうしましょうか」となる。0から質問されてそこから組み立てなくちゃいけないというところだが、アイホールでは既に専門性を持ったスタッフさんがいてうまく回してくれる。
大道さんは中学高校時代、アイホールで育った人。伊丹市の人材として優れた演劇人がいて、こういうのをぱっとやりましょうかと言ったときにうまく進めていただけるということが伊丹独自のものだと思います。
※大道さんは、中学・高校時代、アイホールのワークショップやアイフェス(AI・HALL中学高校演劇フェスティバル)に参加。中学1年生のときには、アイフェスで脚本賞として小原延之賞を受賞。
台本や会場、また、出演者の素材の味を出すにはどういうものがいいのかということやそれぞれ無理がないように動いていただくということから、こういった作品に。
素材や予算などを逆手にとって、伊丹在住や伊丹と由縁のあるといったところを繋げていきました。これくらいの予算で市民劇がつくれるのも人材と劇場があるから。
リーディング劇っていうのは元々コストダウンサイジングした上演なんです。
リーディングの発祥はヨーロッパの方で、国立の劇場が契約している劇作家たちにいい本を書かせるために、書けましたか?と促して、書けたらいい本を元に所属俳優が集まって「さあ読みましょう」と、関係者や観客を呼んで行う読み試しなんですよね。
短編のオムニバスだけでなく、優れた本を紹介したいということで長編のリーディングをすることもあります。
長編の場合、戯曲を書く時間がかかりそれによる予算も多くなりますが、短編オムニバスにすることで、ボリュームとしては2時間程度の作品にしつつうまく技術レベルの高い人をおりまぜとていうようなこともできます。
小道具で自転車が出てきたりがちょっと面白いんですけど、(市民劇のリーディング公演は)何かアイディアがないと2時間座っていただくのは苦しいのではと思い、「これちょっと面白いな」というようなものを出現させた方が良いかなと。
もともとある曲を弾いていただいたりもしていますが、あとはまったくおまかせ。オリジナル曲もあると思います。
「いい感じにやってください」とお願いしました。おがわさんのおかげでエモい感じになっていると思います。(笑)
伊丹の人たちが地元目線で書いた脚本がおもしろいと思いますし、地元の方の目線を通した脚本が売りですね。
劇場で地元の方が出ている舞台を見て楽しんでいただいて、劇場をあとにした後に景色が少し変わっていればいいなと思います。
音楽と演奏は、ウクレレ&ギタープレーヤーのおがわてつやさんが担当。当日の音楽は、録音ではなく生演奏です。
長年、伊丹の様々なイベントに出演されていて、数多く伊丹に来られているおがわさん。
稽古では、ウクレレとギターの音色がとても素敵で、演奏が入るとグッとセンチメンタルな感じに。
指定以外の曲については、ご自身が過去に作曲された曲を使っているのではなく、ほとんど書き下ろされているそうです。
20弱の曲数ですが、ほとんどが30秒とかの曲になりますね。シーンごとの書き下ろしです。
各お話の舞台が伊丹の色んな場所で、それなりに場所がわかる。猪名野神社と言われたらあそこだな、産業道路と出てきたらあそこだな、と(笑)。情景が浮かびイメージしやすいし、思い入れを抱きます。
特に伊丹に縁がある人にとったら、ちょっとした場所への愛着がまたひと段階増したりとか、すれ違う人ひとりひとりへ物語が感じられたりするような、愛着度が2割3割増しされるようなお話が多いと思います。
作家の石﨑麻実さんは伊丹市在住。今回は演出助手も務めます。
県立伊丹高校で演劇に所属し、卒業後は伊丹想流劇塾第5期生として伊丹の演劇活動に参加。現在はかしこしばいに所属されています。
石崎さんによると、今回の作品は短編オムニバスですが、作品の中に別の作品の一部が入り込んだり、構成はちょっと変わったものになっているそう。
石崎さんにも『ビューティフル・サンデー』についてお伺いしてみました。
今回の『ビューティフル・サンデー』では、作家がみんなで1作ずつ作品を書いているのですが、わたしは2作担当していて、カリヨンと「タリーズ」「ニトリ」がある交差点について書いています。
伊丹で育って、子どものころは毎日定時に鳴っていたカリヨンが、今は定期公演だけで、定時はほとんど無音になってしまったのが寂しくて。そんな思いを込めて今回の物語を書きました。
伊丹想流劇塾第5期生として学んで、今年の4月に今回の公演の声をかけてもらいました。物語の中に「ビューティフル・サンデー」が出てくる作品は夏くらいには書き上がっていて、そのあ公演のタイトルになったので、絶対に内容を変更できないな、とちょっと緊張しました(笑)。
わたしもそうですが、伊丹で生まれ育ったひとにはなつかしい風景の作品となると思います。ちょっと違う伊丹の景色も見てほしいなと思いますね。
出演者からは、伊丹在住で、劇団「エイチエムピー・シアターカンパニー」に所属する米沢千草さんにお話をお聞きしました。
演劇は、市立伊丹高校1年生から演劇部に所属して始めました。大学も演劇専攻で、卒業後数年間は、フリーでいろんな団体さんに出させていただいていて、2013年に「エイチエムピー・シアターカンパニー」に入団しました。アイホールでは年に1回は公演を行っています。
伊丹が出身ということでお声がけいただいたのがきっかけです。小原さんから公演の企画のお話を伺っていて、その思いや経緯などはわかっていたつもりだったので、是非出演させてくださいということで参加しました。
小原さんとはこの機会がなかったら多分ご一緒はできなかったと思います。
市立伊丹高校演劇部の顧問の先生が、私が卒業してからもずっと同じ渡辺美左子先生なのですが、私達の代からもわりと「私は演劇わからないので自分たちでやっていって」というタイプの先生で、私は卒業後外部コーチとして関わっていたのですが、その頃と小原さんがアイフェスの阪神支部の審査員をやってくださってる時期が重なっていて、市高のことを見守ってくださったこともあり、時々お話させてもらったり。俳優と演出家という立場ではなく違う形で接点がありました。
リーディング劇は、公演や演出によって違っていて、それを今回実感しています。リーディング公演の出演は今までもありますが、今までと違っていて、ちょっと戸惑いもあります。(笑)
小原さんからは今回、「(リーディング劇で)本を持っているんだから、ちゃんと読んでほしい、カンペになってはいけない」というお話がありました。リーディングでも違いがあるんだというのを私も実感しているところです。
なじみのある場所が、言葉であったり風景としてだったり、たくさん出てくるので、自分の幼いときの経験に重ねてみたり、今の自分と照らし合わせてみたりということがわりとしやすいんじゃないかと思います。
劇場を出て街を歩いていたら出会える場所がたくさんあるので街に愛着が湧いたり興味を持ったりというところにも繋がるんじゃないかって。
今回の公演では、舞台の進行に合わせた同時手話通訳が実施されます。
上演台本の貸し出しにも対応されているとのことですので、ご希望の方は、アイホールまでお問い合わせください。
今回は、チラシも伊丹在住者によって作られています。
デザインは、ITAMI ECHO編集部(株式会社echo fields)の鹿嶋が個人事業「鹿鳴舎」として担当し、イラストを、伊丹市在住のイラストレーター、taemiさんにお願いしました。
「伊丹にまつわるエピソードや出来事」「伊丹の歴史や魅力を再発見」ということで、伊丹の様々なスポットやシーンをお伝えして描いていただきました。とてもかわいいイラストは、アイホールや公演関係者のみなさんからも大好評!
公演に関する最新情報は公演Twitterで発信されています。作家・出演者等の情報やコメントなども紹介されており、充実の内容です。要チェック!
また、アイホールウェブサイトで公開されている出演者座談会や作家・演出鼎談では、興味深いお話が詳しく紹介されていますので是非ご覧ください。
今回のリーディング公演『ビューティフル・サンデー』は、伊丹在住・出身者にとってはよく知る伊丹のことや馴染みのある場所がたくさん登場し、きっとわかりやすくおもしろい作品だと思います。
伊丹では盆踊りで当たり前に流れるとして話題になった曲「ビューティフル・サンデー」がタイトルについた公演とあって、劇中で「ビューティフル・サンデー」がどのように出てくるのかといった期待も高まります。(参考:ITAMI ECHOインタビュー「伊丹の盆踊りの定番曲!「ビューティフルサンデー」の田中星児さんにいろいろ聞いてみた!」)
どんな場所が出てくるのか、どんなエピソードが登場するのかといったことに加え、今回お話をお聞きしたみなさんが、観終わったあとのまちの景色やまちへの愛着について語ってくれたように、鑑賞後どんなふうに見えるのか、どんな気持ちになるのかが気になりますね。是非実際に観て確認してみてください。
昨年のアイホール存続問題を通して初めてアイホールを認識した伊丹市民や伊丹出身の方もおられると思いますが、これまでアイホールに足を運んだことがない方でも、気軽に観られて楽しめる公演だと思います。
伊丹への愛がそこかしこで見られる今回の公演。演劇は初めてという方にもぜひ見ていただきたいです!
12月24日(土)・25日(日)
15時開演(開場は30分前)
アイホール(伊丹市立演劇ホール)
伊丹市伊丹2-4-1
小原延之
中村ケンシ(空の驛舎)
石﨑麻実(かしこしばい)
布浦真(自分史の会)
ほっぴぃ(自分史の会)
山中晴彦(自分史の会)
わたなべみさこ(自分史の会)
井上多真美(にほひ)
井田紋乃
稲山雅也
植村美咲(劇団五期会)
オノ
藤原佳奈
町田康典
米沢千草(エイチエムピー・シアターカンパニー)
朗読赤とんぼ(加藤八重子、蔵川裕子、渕律子、渡辺美左子)
株式会社エスエフシー
忠島裕女
前売:2,200円
当日:2,500円
アイホール
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公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団
伊丹市
伊丹市立演劇ホール
NPO法人MAMIE、伊丹けんだま協会、エイチエムピー・シアターカンパニー、かしこしばい、劇団五期会、自分史の会、空の驛舎、にほひ、舞夢プロ、ライターズカンパニー、朗読赤とんぼ
文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業
Written by Takako Kashimaなみま