公開日:2022年09月28日
2022年6月5日(日)に伊丹三軒寺前広場で開催された、アフリカンフードや雑貨と音楽&ダンスが一体となったイベント「Africa with LOCAL」。
「『アフリカって楽しい』を、地域と共創する一日。」というサブタイトルのとおり、アフリカ出身の人(以下、アフリカン)やアフリカ好きの日本人、地元伊丹の人たちが一緒に楽しめる素敵なイベントでした。
今回、イベント後に改めて、発起人のお二人、松尾誠介さん(一般社団法人 GREENJAM)と前田智帆さん(公益財団法人太平洋人材交流センター)に、クロスロードカフェにてインタビューを行いました!
お二人のアフリカとの出会いや、今回のイベントに込めた思い、これからやってみたいことなどを伺いましたので、ぜひご一読ください!
ーまずは、今回のイベントを開催したきっかけを教えてください。
松尾:自分自身、実はアフリカに行った経験がないのですが、アフリカンの親友がいたり、智帆さんとつながっていたりして、アフリカに良いイメージを持っています。なので、イベントを企画することで、アフリカの楽しいところを知って欲しいと思いました。
アフリカのイベントはどうしてもチャリティーとつなげることが多く、それには違和感がありました。日本人はどうしてもアフリカ=貧困というイメージを持ってしまっていますが、それはそもそも全然違うし、そういう大きな枠ではなく個人個人としてアフリカン達を見てほしい、という思いがあったので、それを伝えたかったのが一番です。
楽しい!というイベントをしたい。アフリカのいいところを感じて、日本にいるアフリカンとも友達になって欲しいし、彼らが最高にいいヤツらなのでぜひつながって欲しい、というのがきっかけでした。
ー松尾さんがアフリカンの友人と知り合ったきっかけは?
松尾:神戸で外国人向けのゲストハウスをしていたのですが、そこでいろんな国や人種の方と出会う機会があって、一番馬が合うのはアフリカンだなと感じていました。特に西アフリカの人たちとなぜか馬が合った(笑)。西アフリカの人たちで、セネガル人とかガーナ人とか、ゲストハウスに来る人が多かったんです。
ー西アフリカの人って、日本であまり会う機会がないように思いますが……
松尾:いや、けっこうセネガル人は多いです(笑)。ひょんなことからセネガル人の親友ができて遊んでいたら、それをきっかけにつながっていって。智帆さんに神戸でセネガル人の集まりに呼んでもらったら、繋がっている人が沢山いた。
ゲストハウスで働いていたからこそ、いろんな国の人と出会い、アフリカンの個性とかその国々の人の個性とかがいろいろ分かるようになってきて、その中でも自分はアフリカンに近いと感じました。その後、智帆さんとつながったり、自分の大学関係の活動でアフリカにつながったりしていくうちに、アフリカにハマったというか、シンプルに楽しかったんです。
ー前田さんとも、ゲストハウスで働いていた時につながったのですか?
松尾:時期的にはそうですが、ゲストハウスとは直接関係なく、セネガル人の親友ブールを通じて、Zoomの集まりで最初に知り合いました。
前田:ブールが友達呼ぶからと言って、知らない日本人を連れて来たな、と。
松尾:ブールとの友達付き合いの感じからしてマジメな会のはずがない、バカ話ばっかりしているんだろうって思ってZoomに入ってみたら、智帆さんを含めて真剣に語り合う会で、すごい人ばかり(笑)。
前田:セネガル大好き人間の会だったんです。
松尾:これはミスったなーとあとでめちゃくちゃ反省して(笑)。それに、ブールの飲み友達ですって自己紹介したら、後で彼にめちゃめちゃ怒られました(筆者注:セネガル人の多くはイスラム教徒)。そんなこともあって、初対面の時は散々でしたね。
ー前田さんとセネガルの関係について教えてください。
前田:大学3年生の時に初めてインターンシップでセネガルに行きました。その時は、国際協力を勉強していて、第二外国語がフランス語だったので、フランス語圏アフリカへ行こうと思ってセネガルとカメルーンで迷った結果、日本の文化に近そうなセネガルを選びました。
航空券も安くなく、黄熱病などの予防接種を自分で受けないといけなくてとてもお金がかかり、一生懸命バイトしました。それでも行ってよかったと思います。
大学を卒業後にJICAの青年海外協力隊に参加して、再度セネガルに行きました。2年間はセネガルのンドファンという町で活動して、さらに8か月間は別の町でも活動しました。
ーセネガルではどんな活動をしていたのですか?
前田:私が住んでいたンドファンは地方の町で、一番の活動は「おしゃべり」でした。コミュニティ開発という職種で派遣されましたが、やることも一緒に活動する人も決まっていなくて。
私はその町に入った初めての協力隊員だったので、まずは地元の人と信頼関係を築くところから始めないといけなくて、ひたすら通りに出てしゃべって、あの人があれをしているというのを調査しました。
町の人でやりたいことがある人がいれば一緒にやったり、人をつなげてみたり。他の任地の先輩隊員から学んだ改良かまど作りや、JICAの専門家から学んだ稲作を地元でやってみたり。他にも日本文化祭りなど、何でもやりました。
活動終了後は、一度帰国して就職先を決めてから、また4か月間アフリカの旅をしました。今は、仕事でもアフリカに関わっています。
ーどっぷりアフリカに浸かっていますね。先ほどの話に戻りますが、松尾さんが初めてZoom会議に参加された時、皆さんはお仕事とは別にマジメな話をしていたのですか?
前田:コロナ禍になってからあまり人に会えなくなり、オンラインで何かできないかと考えました。日本からセネガルにもっとつながりたいのですが、セネガル好きの日本人でもコミュニティが分かれていて、あまり情報収集やコミュニケーションできる場所がなかったので、まずFacebookグループを作り、不定期で集まって話すZoomの会をしていたら、そこに松尾さんが来たんです。マジメな会じゃなくて、セネガルについてめっちゃ喋る会なんですけど(笑)。
―改めて、今回のイベントの特徴やコンセプトなど教えてください。
松尾:智帆さんは、Africa Diaspora Network Japanというグループで活動していたり、アフリカのフードイベントをしたり、いろんな活動をされています。それでも最近、日本にいるアフリカンには他にもいろんなコミュニティがあるということが見えてきたので、智帆さんのコミュニティと他のコミュニティが一緒に仲良くなるよう、智帆さんが知らないコミュニティにも自分から声をかけてイベントに参加してもらいました。
日本でアフリカのダンスをしている方でも、実際はアフリカンとの直接のつながりがあまりなかったり、自主企画以外ではアフリカのイベントには参加されてなかったそうで、今回アフリカメインのイベントに参加できてうれしかったとおっしゃっていました。お互いに少し知っている程度の潜在的なアフリカ関係者を集めて、楽しくイベントをしたいというのもありました。
前田:出店者さんに話を聞いてみると、いつもは街のマルシェイベントの出店の一つとしてアフリカ雑貨があるぐらいだけど、こんなにアフリカの雑貨を扱っている人が集まったイベントは初めてです!とおっしゃっていて。お互い、街に出てみるとなかなかカジュアルには会うことがないんです。みんなどこで生きているんだろうって思いますね(笑)。
松尾:これまでアフリカのイベントをいろいろ見たのですが、ある一つのコミュニティが主催していたり、ある一つのコミュニティが固まっていたりすることが多くて。せっかくなら、浅い関係でもいいのでアフリカ関係者全員が集まれるようなアフリカイベントをしたいと思いました。実際、「はじめまして」という声が聞こえたり、「SNSでは知っているけど会うのははじめて」という人もいたりして嬉しかったです。
前田:私は普段はカフェでランチするイベントとか、誰かの家で話をするものとか、小さいイベントなら企画してきましたが、こんな大きな広場で街の人たちに対してアフリカを知ってもらえる機会をつくるというのは、誠介さんがいないとできなかったです。大感謝!
松尾:日本にいるアフリカンとも繋がってくれたら嬉しいなとも思いました。
前田:アフリカンの人たちも、インターネットで見て、ここにアフリカ好きな人が集まると思って来た人や、最近関西に引っ越してきて寂しかったのでアフリカに関心ある人のコミュニティを探していたけど、このイベントに来てフランス語を話す人や、同じ国出身の人にも出会えてすごく嬉しいという人もいました。その人たちはカメルーン人だったんですけど、嬉しくて次の日も会ったみたいです。
-ねらいどおりの出会いがあって良かったですね!もう一つ、伊丹で開催したことについて、何か思いなどがあればお聞かせください。
松尾:このイベントを例えば神戸でやったら、地元の人ではない観光客の方々も来てしまうと思うんですよね。そうではなくて、地元の人たちに参加してもらいたい。なおかつ、価値観に許容があってこのイベントを受け入れてくれるような、積極的に関わってくれるような人がいる・・・そう考えたら、伊丹以上の選択肢はありませんでした。今回は伊丹の人たちの優しさに助けてもらった部分もありますし、もっと地元の人に来てもらえるのが理想です。
だから、今回は気取らない感じというのを出そうと思いました。フツーに来てくれたらいいんですよーって。デザインも、アフリカのイベントなのでラスタカラー(緑・黄・赤)×ブラックみたいなのをドーンと打ち出すよりも、できるだけ来やすい雰囲気となるよう考えました。
-確かに、伊丹の人は許容力がありそうですね。
さて、それでは、今後の活動としてやってみたいことなど、お話いただけますか?
松尾:今回、これだけの規模のアフリカイベントができたことで、すごく反響がありました。2回目の話もいただき、ぜひやりましょう!と言ってくれる方もいて。
ただ、今回はいろいろと反省点もあったと思います。一つは、もっと地元の人と一緒にできることがあったと思うし、個人的には例えば盆踊りをして日本文化を一緒に楽しむこともできたのかなーとか、そういった地元の人とつながることをもっとしていきたい。
もう一つは、日本にいるアフリカンの子供たちと地元の融合でしょうか。伊丹に限らず、外国人の人口は増えてきていると思いますが、例えば日本語しか話せない外国人の子供たちって、アイデンティティで壁にぶつかるときが絶対にあると思うんです。これから日本も多文化共生社会に変わっていくと思いますが、今はまだ境目なので、ハーフやミックスの子供たちも含め、地域として境目なく受け入れてあげられる街にしたいと思います。
こういうイベントをやることで、少しでも友達や憩いの場が増えたら良いと思います。次世代の子供たちのためという気持ちが一番大きいので、そができるなら「アフリカwith LOCAL」に限らず、何でもやってみたいです。
前田:私は日本に帰国してから、日本に住むアフリカンとたくさん関わるようになって、彼らのポテンシャルはすごいと思いました。ただ、日本人が企画していてアフリカンがいないアフリカのイベントや、アフリカンが企画しているアフリカンばっかりのイベントはあるけど、その二つのコミュニティが交わり合っているイベントがあまりないことが疑問でした。日本の人たちがアフリカンを学校に呼びたい時や、一緒にイベントをしたい時に、私に声をかけてもらってコミュニティが交わるようにしたいという思いがあります。
今、日本に住んでいるアフリカンのネットワークを一つにしよう、ここに連絡を取ってもらったら、全国いろんなところのアフリカンとつながれるようにしようという活動をしている、Africa Diaspora Network Japanという団体の法人化に取り組んでいます。今回のイベントもそうした活動の一つだと感じていて、もっともっとコミュニティを混ぜていきたいと考えています。
松尾:もっと、地元の人にも、アフリカンの子供たちにも企画に入ってもらいたいし、それは課題です。まだまだ伸びしろのあるイベントだと思っています。
前田:次にやるときは、アフリカと全然関係がない人も混ぜて、アフリカ好きの人とこんな企画はどう?とかってアイデア出し合うような、新しいコラボレーションが生まれたら面白いなと思います。
松尾:伊丹で長年やっているイタミ朝マルシェなんて凄く良いイベントなんですよね。そういう朝に人が動く文化が伊丹にはあるので、朝は伊丹の人がアフリカを楽しむ、昼から夕方まではアフリカン達が伊丹のことを楽しんだりイベントに参加したりして、夜はファッションショーや盆踊りで締める、みたいな。とにかく、地元の場所を借りています、ではなくて、地元の人と一緒にやる、地元の人が楽しいアフリカのイベントにしたいと思います。
(インタビューはここまで)
ひとくちにアフリカ関係者といっても、アフリカ出身者やハーフ・ミックスと呼ばれる人たち、日本人でアフリカのダンスに取り組む人たち、アフリカの特定の国と関わりがある人たちなど、いろいろなコミュニティーがあることが分かりました。またそうしたコミュニティーが交わる場として伊丹でイベントが開催されたことを嬉しく感じました。
お二人が熱く語っておられたのは、日本に住むアフリカン、特に次世代の子供たちが自然体で楽しく暮らせる未来のこと。身近にそうした子供たちの葛藤を感じているからこそ、力になりたいという責任感や優しさが溢れていると感じました。
もう一つ、伊丹でこうしたイベントが開催される意味を考えてみると、一つ思い当たったのが、伊丹の秋の風物詩となっている「鳴く虫と郷町」です。
普段は虫の専門家でもなく関わりもない普通の市民が、「鳴く虫」と様々なものを組み合わせたアイデアを自発的に企画して、街全体で楽しむイベント。
こうした素地がある伊丹でなら、AfricaとLOCALを組み合わせた多彩なアイデアが生まれるかもしれない……と今後の展開が楽しみになりました。次回の開催にも期待しましょう!
Written by マルコ