公開日:2022年08月25日
伊丹市立図書館「ことば蔵」が今年の7月で10周年を迎えました!
文化の街・伊丹の顔のひとつであることば蔵。
2012年7月1日に宮ノ前に移転オープンした伊丹市立図書館本館の「ことば蔵」という愛称は、市民からの公募で決まりました。
伊丹は「清酒の発祥地 」といわれ、移転先の場所は、元は剣菱酒造の酒蔵があったところでもあり、ことば文化都市としての伊丹ということで、この名前になったそうです。外観は酒蔵をイメージしたものになっています。
オープン時には、伊丹市に在住しておられた芥川賞作家、田辺聖子さんが名誉館長に就任されました。
今回の10周年では、ことば蔵の館内もバルーンで飾りつけされて、10周年記念のブックカバー、ステッカーも配布されました。(現在は配布終了、ブックカバーのダウンロードは可能)
市民自らが取材して伊丹の歴史や文化を発信している郷土史「伊丹公論」(2013年、73年ぶりに復刊)も10周年記念号を発行しています。
創立からいろいろなひとたちの尽力によって10周年を迎えたことば蔵。今回の記事ではことば蔵をつくったひとたち、今現在ことば蔵を盛り上げている方々にもインタビューしました。
ことば蔵は、兵庫県内初となった「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2016」優秀賞を受賞。53施設の中から4施設が選ばれました。
その後、ついに念願であった“大賞”を受賞!!
ことば蔵が評価された理由は、「公園のような図書館」をコンセプトに、市民のアイデアを積極的に取り入れることで年間200回を超えるイベントを開催し、読書だけでなく、誰もが気軽に訪れる図書館づくりを実践してきたこと。
地域経済とも関わりを持ち、市民と一体となって持続可能な運営方法を取り入れてきたことも高く評価されました。
うれしいニュースに沸いた伊丹市では、「伊丹公論」も号外を発行!
この時も記念のブックカバーを配布しました。
複数の新聞にも大賞受賞は取り上げられました。
「大賞に輝く」「日本一」の見出しがまぶしい!
ことば蔵を想い、作り上げてきた方々の思いが叶った大賞受賞となりました。
ことば蔵を特別な図書館にしていることのひとつが、市民なら誰でも参加できる交流フロア運営会議。
運営会議は「こんな図書館にしたい」といったアイデアの持ち込みなど大歓迎の、とてもオープンな場です。
誰でも参加OKで、実際に持ってきたアイディアがどんどんかたちになっていく。こんな図書館は珍しいのではないでしょうか。
ことば蔵の職員だけではなく市民が主体となってことば蔵をつくっていく、実践の場となっています。
ことば蔵のオープンにあたって尽力されたメンバーのお一人で、プレオープン時から運営会議のファシリテーターもされていた中脇健児さん(当時は公益財団法人伊丹市文化振興財団(現・いたみ文化・スポーツ財団)職員)がオープンの際に残されたコメントを見ると、当時の運営会議への期待感がよくわかります。
伊丹はボクのれっきとしたホームグラウンドなわけで、常にここから新しいチャレンジを仕掛けていきました。
ことば蔵のパークスペース(現・交流フロア)運営にあたって、オープン前からコアメンバーとして各種会議や市民参加の運営会議のファシリテーターを勤めさせていただいたのは、かなり大きな経験となりました。
人の気持ちの推移というか旺盛を感じながら、意見の交通整理をする役は、かなりのプレッシャーを要するはずなのですが、幸いなことに綾野さんや村上さん、若狭さんと協力な面々と一緒に取り組めたことと、なによりホームグラウンドならではのあたたかい雰囲気のおかげで、ずいぶんやりやすかったように思います。
むしろ「ことば蔵」についてはこれからの方が重要なわけで、そこはこれからも色々な方と一緒に知恵と汗をかきながら、ぼちぼち進んでいくことでしょう。
ことば蔵の運営会議は、すごいオモシロいです。あの仕組みと取り組みは公共スペースの活用法として、すんごい新しい!やっていることは取るに足らないもののようだけど、根本から在り方を刷新している!間違いない。
(中脇健児さんSNS投稿より)
運営会議から始まったことば蔵のオープンから10年、現在ことば蔵で日々働いていらっしゃる方々からもメッセージをいただきました!
2019年度に館長に就任しました。平成24年のオープン以来、職員もさることながら、市民の方々がアイディアを出してくださり、ことば蔵とその事業を支えてくださってきたと思います。
月1回の、誰でも参加できる交流フロア運営会議を基本として、幅広い交流事業が成り立っています。市民の方々が、自分のやりたいことを実現できる場として広がっていることを感じます。
7月16日(土)開催
特別対談「ことばと絵~ツウヨウさんとネンテンさん」
7月23日(土)開催
みんなの寺子屋
今年でことば蔵に勤務して4年になります。
10周年の時にことば蔵にいられて光栄です。市民との協働を中心に、10周年だからいろいろやりたいことがあって、今まででいちばん忙しく、うれしい悲鳴という感じですね。
10周年のブックカバーとシールも人気なんですよ!
来年の3月までは10周年イベントを開催していますが7月がいちばん多かったですね。いろいろなイベントや講座があるので、職員にとっても、またとない勉強の機会です。今度より盛り上がっていくことば蔵を感じていただけたらと思っています。
8月21日(土)
講演会「これからの図書館を考える~市民と創る交流の場~」
10周年のメッセージを市民の方から募ったら、たくさんの方からメッセージをいただいてうれしかったです!特に『10周年おめでとう』のメッセージはうれしかったです。みんなに愛されて大切にされて10年やってきたと感じられました。
市民の方が持っているものが多くあって、アウトプット力があるおかげで、イベントも絶えることなくやってこれています。
自習室など使用したりイベントに参加してくれたりする子もいい子たちばかりで、開館当時は小学生だった子が大学生になって、声をかけてくれたりもするんですよ
8月13日(土)
メカムシデザイン工房白石卓也さんによることば蔵で昆虫採集
現在も、10周年記念ベントたくさんのイベントを開催しています。
ことば蔵のオープンのために尽力された方々には、すでにご紹介した中脇さんのほか、行政の方であったり市民の方であったり、立場は様々ですが、伊丹にみんなが集まることができる良質な図書館を、という想いは皆同じでした。
尽力されたお一人、若狭健作さん(株式会社地域環境計画研究所)に当時のことを振り返ってコメントをいただきました。若狭さんは、横浜で行われた「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2016」最終選考会の際もプレゼンテーションで登壇されています。
『交流フロアって一体どんな交流するんですか』。
これが、開館10カ月前に市役所の担当者からの相談を受けた正直な感想でした。市立図書館の新館オープンに向けて1階の“なんにもない”空間に「交流」の文字だけ。集められたメンバーとともに、全国のすごい図書館を見に行こうと長野県小布施町を訪れ、そこで繰り広げられる運営会議の話に感動しました。
帰ってきて伊丹で活動する人に話を聞いてまわり、伊丹商工プラザの会議室で最初のことば蔵運営会議を開催。以来3年にわたって会議の進行をお手伝いしてきました。常連と新人が入り混じりながら回を重ねるうちに、次々とヒット企画が誕生しました。
最も印象的だったのは、運営会議での自己紹介で自分の趣味を紹介した男性の言葉です。
『私の趣味はことば蔵です』
毎月欠かさず会議の席に着き、笑顔で参加者の提案を聞きあいづちを打つ彼の姿に「交流」の答えを見つけたような気がしました。出入り自由で、だれもが参加できて、いつでも抜けることができる−なんにもなかった空間に生まれたゆるやかな連帯を守り続けてこられた運営会議メンバーの皆さん、10周年おめでとうございます。
伊丹の街の市民代表として、同じくオープンに力を尽くされた村上有紀子さん(当時はNPO法人いたみタウンセンター副理事長)からもコメントをいただいています。村上さんは、「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2016」最終選考会にも「応援したい」「大賞受賞の瞬間が観られるかも!」と足を運ばれました。
新しく開かれた図書館の立ち上げに関わることができて、ワクワクして、とても楽しかったです。本にまつわる様々な事を調べていく中でつながりも生まれました。
図書館という場の力をこれからも信じて様々なことにチャレンジしていってもらいたい。既成概念にとらわれず、自由な発想で出た意見を、くさすことなく、ブラッシュアップしながらよりよいものにしていく運営会議こそが成熟した伊丹の市民力を育てていくのだと思います。
「公園のような図書館」を目指したことば蔵。当時、市職員としてことば蔵の立ち上げとその後の運営に尽力、「園長」をされたのち「館長」にも就任された綾野昌幸さんからもコメントをいただきました。
綾野さんも「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2016」最終選考会でプレゼンテーションをされています。
この度ご依頼をいただいて、伊丹市立図書館ことば蔵が開館して10年経ったんだな、とあらためて感じた。
私はオープン10カ月前に、まちづくり部門に加えて図書館を担当しなさい、という兼任の辞令をいただいた。さあ、どうしようかという思い。自分は図書館に無縁な人間だったからだ。今度の図書館は、活性化に結び付く交流事業も行う館。
コンセプトは「公園のような図書館」ということで、開館前から「園長」と呼ばれて、図書館に足が向かなかった自分をターゲットに色んな事業を考えるのと、やはり伊丹の強みは市民力!なので、市民の方と一緒に新たな図書館を作り上げてきた。
そして、「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2016」大賞を受賞!実は開館当初から図書館に関わっていただいた方と「いつか、取れたらいいね」と話していて、それが目的ではないが目標にしていた。
それが4年目にして大賞が取れたのは、官民協働で進めてきたことが評価されたので本当に嬉しかった。
最終選考会のプレゼンも園長が口火で運営会議のメンバーにしていただいた。大賞が取れると思っていなかったので受賞コメントも考えておらず(笑)、開館してからのことを思い出し、こみ上げるものがあった。自分は今は伊丹市の職員ではないが、市民として「ことば蔵」が今後も愛される施設であり続けてほしい。
さて、ことば蔵とわたしのご縁(?)についてですが、名古屋から伊丹に引っ越してきたわたし。
名古屋にいるとき、阪神間か北摂で住む場所を決めようと、ネットでいろいろな街を調べていました。その中で伊丹市に惹かれた理由のひとつが、実はことば蔵です。どんなものかよくわからなかったのですが、先述した「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー受賞」や豊富なイベントなどが目に入り、なんとなく、伊丹もいいのかも!とぴんときたのです。
それは「本がたくさん読める」「イベントに参加できる」ということだけではなく、こういう図書館がある街なら、文化的・教育的なことにお金を使ったり、それに尽力するひとびとのいる街と思ったのです。
それが理由のひとつになって伊丹に引っ越してきて、予想通りことば蔵はわたしを助けてくれました。
ことば蔵で開催されたリトミック教室に参加してママ友ができたり。
自宅でのお茶の入れ方を習いに「みどり園」の佐野社長のレクチャー(まちゼミ)を聞きに行ったり。
そして図書館はやっぱり本!
読書好きの間で話題の本、特に海外の翻訳本などが「もうある!」という早さで入ってきていることが多いと感じます。
これまでいろいろな街に住み、その街の図書館に通ってきました。もうこれは個人的な好みですが、「ことば蔵とは趣味が合うなー」と思いながら予約することが日常になりました。
「ベストセラー」や「○○賞受賞!」の帯はつかないけれど、本好きのひとたちの間で話題の本が予約でいっぱいになっているのを見ると、この街にこの本を読むひとが他にもたくさんいるんだなーと思います。
また、以前はほとんど小説ばかり読んでいたのですが、3階入り口を入ったところにいろいろな分野ごとに本を並べてある棚が非常に見やすくておもしろい。
自分にとってはずっと、「お目当ての本を借りに行く」場所であった図書館ですが、ことば蔵に行くようになって「興味の幅を広げに行く」場所にもなりました。
また、無限に興味が広がり新しい本を読んでほしがる子どもがいるけれど、無限のスペースは家にはない……という親の立場としてもとても助かっています。
休日の朝。3歳の息子に、今日は伊丹でどこに行く?というと、「としょかん→なかまんさん→いなのじんじゃ!」と伊丹宮前のゴールデンルートをすでに主張。ことば蔵のおかげで順調に伊丹の子に育っています。
これからも変わっていくであろうことば蔵が楽しみです。
伊丹市立図書館ことば蔵
伊丹市宮ノ前3-7-4
072-783-2775(代表)
072-784-8170(交流事業・貸室)
火~金:9:30 〜20:00
土日祝:9:30〜18:00
Written by なみま