【祝!直木賞】伊丹・有岡城が舞台のミステリ『黒牢城』

公開日:2022年02月10日

第166回直木賞に、米沢穂信氏の『黒牢城』が選ばれました。

『黒牢城』米沢穂信署 (角川書店)

なんとこちら、伊丹の有岡城が舞台で、主人公はあの荒木村重。

直木賞の他にも、第12回山田風太郎賞受賞、『このミステリーがすごい! 2022年版』国内編1位、『週刊文春ミステリーベスト 10』国内部門1位、『ミステリが読みたい! 2022年版』国内篇1位、『2022本格ミステリ・ベスト10』国内ランキング 1位と、国内のミステリタイトルを総なめにした作品です。

さらには2022年本屋大賞にもノミネートされているとか。

もう獲得タイトルがすごすぎてよくわからなくなってしまいますが、さっそく読んでみましょう!

簡単に本のあらすじを説明すると……、

織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠り、戦の準備を進める荒木村重は、城内で次々に起きる難事件に悩まされます。動揺する部下や民衆を落ち着かせるため、村重は、自ら捕え、土牢に幽閉している織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くように求めます。

ページを開くと、2ページ目にさっそく「伊丹郷の城」という言葉がでてきてうれしい。

『黒牢城』米沢穂信署 (角川書店)

もともとは「伊丹城」と呼ばれていた城を大改築した荒木村重。その新しい城は、次のように描写されます。

土地のなだらかな北摂にあって、その巨城は、人が築いた丘のごとくにさえ見えた。伴天連ルイス・フロイスが「甚だ壮大にして見事」と評した大城塞、その名も改め、有岡城という。

伊丹市民ですが、有岡城がそんなに大きな城だったとは知りませんでした。「人が築いた丘」と言われるほどの見事な城だったのですね。

舞台はずっと有岡城。織田との戦に向けて籠城するうち、日ごとに有岡城内にも伊丹の街にもひりつくような、戦に倦んでいるようなムードが広がっていく様子がよくわかります。

城内で難事件が起こるたび、荒木村重は黒田官兵衛の元へ赴き、解決を求めます。

手足も伸ばせない狭い土牢で村重から事件の様子を聞くだけで謎を解決していく官兵衛は、戦国の安楽椅子探偵でしょうか。(実際は土牢ですが…)

二人は共に謎を解いていきますが、そこは戦国武将同士、己の腹の底は決して見せません。ふたりの一言一言のやりとりには緊迫感が漂い、スリリングです。

有岡城内で起こるさまざまな謎を解決するとともに、物語をふたつの大きな謎が貫きます。

なぜ、荒木村重は敵方の黒田官兵衛を生かしておくのか?

なぜ、黒田官兵衛は死よりも屈辱的な囚われの身として自分を置いた荒木村重に協力するのか?

ミステリでありながら、戦国の世を生きる武将たちの、さらにはその妻や子どもたちの生きざまもしっかりと描かれた骨太な作品です。歴史というのは一面だけで語ることのできない、人間がつくる物語だと思い知らされます。

そして最後の最後で感動の場面が……!

現在は城跡だけが残る有岡城ですが、ここで壮絶な物語があったのだとありし日の伊丹に思いを馳せられる作品です。

有岡城が舞台の作品が直木賞を獲るなんてそうないことだと思うので、ぜひ読んでみてください。

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