公開日:2022年01月18日
2022年1月23日(日)に、第36回伊丹市民オペラ定期公演『アイーダ』が開催されます。伊丹市民オペラの定期公演は2019年3月以来、3年ぶりの開催となります。
※チケットは全席完売しました
特集の前編では、今回の定期公演『アイーダ』の概要、演出家の井原広樹さんのメッセージ、合唱団の練習風景についてご紹介しました。
後編では、伊丹市民であり、長く伊丹市民オペラに関わってこられて、現在、演出助手を担当されている籔川直子さんにお話を伺いましたので、その模様をお伝えします。
-籔川さんは伊丹市民オペラで演出助手をされていますが、具体的にどういったことをされているのですか?
演出助手の役割は、演出家の意図をくみ取りながら、合唱団を含む出演者全員が演出家からの要望に対応できるよう、練習を進める立場にあります。
演出家の井原広樹先生から言われたことを全員が同じ速度や度合でインプットできたら、明日から演出助手は要らなくなるのですが、そうはいかないですよね。特に、市民オペラということで、合唱団には初めての方から何度も今回の作品を経験した方まで、いろいろな方がいるので、稽古しないといけないことの幅はとても広いです。
-音楽を始めたきっかけやオペラとの出会いについて教えてください。
音楽を始めたきっかけというのは、3歳からピアノを始めたので記憶にないのですが、毎週レッスンに通っていて、ピアノを弾くことが生活の一部でした。
小学生の頃、母がコーラスをしていたので、私も子供クラスに通っていました。指導者の方が伊丹市民オペラに出演されていたので観に行くことはありましたが、毎回行っていたわけではありません。震災前の古い文化会館(現「東リ いたみホール」)で、今のような原語ではなく日本語で上演していた頃です。どちらかと言うと、普段、オペラはほとんど聴いていませんでした。
大阪音学大学に進学、ピアノを専攻していましたが、演劇も好きで演劇部に所属していました。ピアノ専攻としては珍しかったと思います。
大学での演劇部の先輩の勤務先が「伊丹アイフォニックホール」、つまりオペラの担当事務所にあたり、その先輩から「オペラでお手伝いしてくれる人を探しているんだけど、来てみない?」と声を掛けられたのが、伊丹市民オペラに関わるようになったきっかけです。1999年の第13回公演『こうもり』(ヨハン・シュトラウス二世作曲)のときで、震災後に建て替えられた現在の「東リ いたみホール」で開催する初めての市民オペラ公演だったと記憶しております。
最初は、稽古場で役者さんの動く範囲を表すテーピングを貼ったり、小道具の準備をしたりと、ピアノと関係のない部分の作業をしていました。その後、伴奏ピアニストが足りないときには何回かピアノを弾くこともありました。
オペラは、音楽があってドラマ性もあります。作品数が限られているということに少し引っかかりはありましたが、関わるのは面白いと思い、伊丹では裏方もピアノ伴奏もひと通りやりました。
大阪音大の学部(4年制)卒業後は、1年制の専攻科「演出コース」(当時)に進学しましたが、そこを出てそのままオペラ演出を続けているという感じです。
-伊丹市民オペラに関わったことが、演出コースに進学したきっかけということですか?
結果的にはそうですね。その頃いくつか関わったオペラの現場はありましたが、伊丹市民オペラがきっかけだったと思います。伊丹が温かい現場だったから、というのもありました。その意味では、今では年に一度の定期公演で里帰りしているような感じでしょうか。
演出家の井原先生と初めてお会いしたのも専攻科の頃です。専攻科では、演出コースとは言いながら座学だけでオペラが分かるわけでもなく、声楽科のオペラの実技の授業にも通って、いろいろな先生について学ぶということをずっとやっていました。当時、伊丹市民オペラで舞台監督を長らくされていた方から井原先生に、私のことをご紹介いただきました
井原先生がイタリアで本場のオペラを極められ、日本に帰ってこられてお仕事をされていた頃にアシスタントをさせていただく機会が続き、そうした形で演出について教えていただきました。
-伊丹市民オペラに長く関わってこられて、どのような思いをお持ちですか?
日本にオペラが入って来てから昭和の時代までに付けられた日本語の歌詞が、現代的な日本語に直されて上演していたのが平成の初め頃までの状況でした。そこから次第に、海外の作品なので原語で上演しましょうという流れになってきたのですが、その時にも伊丹ではまだ日本語のまま上演していました。私が伊丹市民オペラに関わり始めたのはそんな時期でした。
日本語の方が取っ付きやすいということもあり、今よりも市民の参加者は多かったと思います。その後、伊丹市民オペラがいろんな点で組織として確立されていって、原語で上演するようになり、音楽のクオリティも上がっていきました。井原先生が演出を引き継がれて、より本格的なオペラ公演へとレベルが上がったことで、伊丹市民オペラの良さが知られるようになり、遠くからも合唱団の参加者が集まるようになりました。
伊丹市民オペラは長い年月の間により良い形を模索して、今のように多くの市民の方が参加できる伊丹市民オペラのスタイルにつながっています。
クラシック音楽というもの自体、年月をかけないと成果がでません。それは、舞台に出る人も観る人も同じです。長い年月をかけてこその今の伊丹市民オペラがありますし、こうして続いてきたことを思うと、伊丹で市民オペラを最初に始められた方々には先見の明があったと改めて感じます。それこそ、90年代の伊丹市バスの車内放送では、「伊丹は光あふれる劇場都市」ってずっと言っていましたから。これまでの長い積み重ねのおかげで、伊丹で市民オペラという文化が続いているので、一度無くしてしまったらもう再開できないと思います。
県外のとあるホールで、伊丹の芸術系ホールに比べて市民向けの文化教室は多いのですが公演数の少ないことに驚かされました。改めて、伊丹は本格的な芸術に触れる機会が多いので、とても恵まれた環境であると実感しました。
-最後に、今回の定期公演についてコメントいただけますか?
昨今、コロナ禍の影響で感染症対策への配慮が必要となり、稽古の機会が限られるなどの制約がある中、工夫しながら短期集中で頑張っています。声楽家のみなさんは、もともと風邪などを引かないよう細心の注意をされていますが、特に今はコロナの感染症対策をとりながら、かなりストイックな状況の中で稽古に取り組まれています。このような状況下でも、1月23日の公演当日に素晴らしい舞台をお届けできるよう万全を尽くしますので、皆さまの応援をよろしくお願いします。
-今回、合唱練習の取材や、藪川さんのお話を通して、伊丹市民オペラの関係者の皆さんがどのような思いで活動をされているのか垣間見ることができました。また、公演の本番を観るのとは違った角度から、オペラの魅力を学ぶことができました。お忙しい中ご協力いただき、ありがとうございました。
籔川直子
大阪音楽大学器楽学部ピアノ科卒業後、同大学専攻科声楽学科演出修了。中村敬一氏、井原広樹氏、故芦田鉄雄氏に師事。オペラ演出として関西を中心に活動。伊丹市民オペラ実行委員会委員。関西二期会オペラ研修所講師。平成24年度伊丹市芸術家協会新人賞受賞・同協会会員。伊丹市在住。
2022年1月23日(日)
14:00開演(13:30開場)
東リ いたみホール(伊丹市立文化会館)
伊丹市宮ノ前1-1-3
※全席完売しました
【前売】
S席:5,500円、A席:5,000円、B席:3,500円 ※全席指定
【当日】
各500円増
※前売でチケット完売となった場合、チケットの当日販売はありません
【いたみっこ席】
1,000円(前売・当日共)
※伊丹市在住在学の小中高生対象、数量限定
※窓口でのみ取扱い(購入時に学生証等を要提示)
伊丹アイフォニックホール(伊丹市立音楽ホール)
TEL. 072-780-2110(水曜日休館)
主催:伊丹市民オペラ公演実行委員会・公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団
共催:伊丹市
伊丹市民オペラでは、活動理念にご賛同・ご支援くださるサポート団体として「伊丹市民オペラ サポーター倶楽部<tifosi(ティフォージ)>」を発足し、会員を募集しています。詳細は、伊丹市民オペラ公式サイト(伊丹アイフォニックホール・ウェブサイト内)をご確認ください。
Written by マルコ