公開日:2023年06月26日
ITAMI GREENJAM’23
2023年9月17日(日)・18日(月祝)/会場:昆陽池公園
ITAMI GREENJAM’23
2023年9月17日(日)・18日(月祝)
会場:昆陽池公園
2014年に第1回が開催され、今年で10年目を迎える無料音楽フェス「ITAMI GREENJAM(伊丹グリーンジャム)」。コロナ禍での開催中止、そして昨年の池田市開催を経て、4年ぶりに伊丹・昆陽池公園に帰ってくる。
今年は第1弾アーティストとして、小山田壮平、THA BLUE HERB、七尾旅人、betcover!! の出演が発表された。
西日本最大級の無料フェスに成長した今も、主催者が〝市民が表現を持ち寄る文化祭〟と位置付ける同イベント。「ITAMI GREENJAM」共同代表の大原智さん、大塚克司さんをはじめ“表現する市民たち”を取材し、伊丹が誇る唯一無二の音楽フェスの軌跡と知られざる舞台裏について、全5回の連載で紐解く。
第1回の今回は、大原さん、大塚さんら運営陣を支える強力な助っ人市民たちのもとをめぐり、話を聞く。(後編)
<前編はこちら>
Index
フェスの楽しみのひとつが、美味しいご飯(とお酒)。音楽を愛でつつ野外で味わうのが格別である。第1回GREENJAMでは、予想以上の集客に午前中で飲食物が売り切れる事態となった。ただ、それだけ人が集まるイベントとあって、飲食ブースも毎年充実し、盛り上がりを見せている。
特に伊丹は、2009年から開催されている「伊丹まちなかバル」の成功により、近年、若い飲食店オーナーの新規オープンが相次いで個性店がしのぎを削り、イベントへの出店も盛んに行われている。
阪急伊丹駅近くの人気韓国料理居酒屋「伊丹直球酒場 吉田」オーナーの吉田達也さんは、そんな若手飲食店オーナーたちの中心的存在だ。GREENJAMとの関わりを聞いていくと、支えているのは決して〝食〟だけではないことが伝わってきた。
大原:吉田さんは、年によって関わってもらう方向が違っていて、吉田さんが代表をされている「伊丹57会(ごーななかい)」(※伊丹の昭和57年生まれ世代の飲食店オーナーグループ)として、「57出店エリア」みたいなことをしてくださったこともあるし、中止になった時に、中止になったのに弁当を届けてくださって、涙なしでは語れないような関わりもあります。
吉田:ははは。中止ってわかっていたんですけど、みんな食材もあるし、片付けしてくれている人もおるから、それやったら、みんなで作って持って行ってあげようやって。いろんな店主が集まって、みんなで弁当作ることってないじゃないですか。弁当作りもすごく楽しくて。持って行って喜んでもらえたらって。それが最初に良い印象与えたな(笑)
大原:毎年、運営のお金が厳しくて、たしかその年もFacebookで『サポートしてくれる人いませんか』って呼びかけた。お金じゃなくても物でも提供してもらえませんかって投稿して。
そしたら結構すぐに、「57会」メンバーの店主さんから、『今、こんなやりとり始まってるで』ってLINEグループのスクリーンショットが送られてきたんです。『大原の投稿見たか』『見たで』『米やったら俺あるし』『俺、これあるで』『ほんならできるんちゃうん』『弁当作ったろうや』って。
大塚:200人分くらいあったんじゃないですかね。
大原:(初の)中止になった2016年です。
吉田:朝、準備の段階で僕らも会場には行っていたので、中止にせなあかんとなった時の大原の顔も見ている。(57会の)全員がもう同じ気持ちになっていたんで、スムーズにいけましたね。
大塚:しかも、「57会」って全部、伊丹で有名どころのお店ですよ。風丹、しばせん、今はないけど焼肉バルエイト……。
大原:初めての中止やったので、めちゃくちゃ怖くて、自分で中止って言うのが。僕が『中止』って口にした瞬間、全部なかったことになる。今でも覚えているけど、当日の朝5時半とか6時に大塚が『どうするん、どうするん』って、僕に決断を迫るわけですよ(笑)。でも水浸しやし『中止にしよか』って。
その後、グラウンドで吉田さんにも会ったんです。中止をオフィシャル発表した後で、もう、すみません!!しかないじゃないですか。そしたら僕が言葉を発する前に、『またやろうや!』って言ってくれたんですよね。なんちゅう人なんやこの人って思って。
吉田:単純に、中止っていう判断をせなあかんって、すごいこと。『今日の飲み会中止〜』とは違う。いろんな人が関わって、昨日今日で決まったことじゃないし、飲食店だけじゃなくてアーティストさんに向けても全部、こいつが判断せなあかん。こいつの気持ち考えたら、今年ダメでも来年また良いイベントできたらいいなっていう気持ちもあったので。その気持ちだけですかね。
大原:吉田さんストーリーはほぼ毎年あるんです。次のストーリーいっていいですか(笑)。2019年にバックヤードでアーティストとスタッフのケータリングを出してほしいとお願いした。アーティストさんにもスタッフさんにも美味しいものを食べてほしいから、アーティストとスタッフしか受け取りができない屋台形式のその場で作る形をお願いしたんです。
でも、食数が僕が伝えていたものと全然違って、実際は予定より多かった。当然そうなると全然追いつかなくて、1日目終わった時に2日目をどうするかという場を設けてくださって。その時に吉田さんが言ってくれたことを覚えています。
『最初、全然話ちゃうやんけって思った。でも大原の中で、きっと毎年こんなことばっかり起こってんねやろな。思っていた以上のことになってもうたとか、これどうしようとか。それを頑張ってるお前のこと考えたら、俺がこんなことでカッとなるのも違うなって。どうやってできるのかを考えるのが俺の役割やな』みたいなこと言ってくれたんです。スゲーな!って。覚えてます?
吉田:覚えてるよ(笑)。2日目はアーティストさんには食べたいものを選んでもらって、スタッフさんにはこちらが用意したお弁当を渡すようにした。
大原:どう対応するかというところの変更をすぐにしてくれて。
大塚:吉田さんには頭上がらないです。GREENJAM以外でも、この前も一緒に「春の子ども祭」という子どもたちの為のイベントをやりましたし。何かあったら頼る。『吉田さーん!すみませーん』って。
大原:そうなんですよ。僕は心が洗われるんです。
吉田:やっぱり、それだけのことを(大原さんたちが)やっている。自分で動いてるし、考えてるし。それは見とっても伝わるから、一緒にやりたいなって。僕らが仲間に入れてもらっていると勝手に思っているので。バックヤードにしても、音楽聴きながらその人たちにご飯作るって、僕らだけの特権やなと思って。だからありがたいし、楽しい。
大原:絶対にネガティブなことを吉田さんは言わないですね。(感情が)ガッとなることもあると思うんですけど、ちゃんと自分の中で前向きな言葉に変えてくれる。僕は吉田さんのことを〝お守り〟くらいに思っています(笑)。吉田さんの前では弱くなっちゃう、何度か泣いていますから。
大原:コロナで中止になった時も「ITAMI CITY JAM」(※2020年GREENJAMの代替として市内3か所で分散開催された市民イベント)で、イズミヤの地下のフードコートを「57会」でジャックしてくれて(笑)。
吉田:同級生がみんなで何かやるとおもしろいんですよね、個性出るので。めちゃくちゃ料理やり出すヤツとか、急にホールめっちゃ回し出すヤツとか、全然回せてないヤツとか(笑)
大原・大塚:(笑)
大原:GREENJAMを〝市民の文化祭〟って僕言いましたけど、ほんまに文化祭してくださっている感じですよね。
吉田:この年になってそういうこと中々できないじゃないですか。お金儲けというよりかは、ほんまに純粋に無心で楽しむという。
吉田:大変でしたね。最初の春先は特に、補償も何もなくていつまで続くかわからへん、お客さんも呼ばれへん、店開けているのがあかんという。その時も、大原が投げ銭ライブみたいなん、やってくれたやんか。
大原:はいはい。あれ、結構集まったんですよ。外出るとか飲み歩くとかあかん、『感染怖いから皆さん家におってください。僕らが皆さんの代わりに飲みに行くので』って、オンラインで繋いで僕らは店に行く、見ている人は自宅でそれを見ながら飲む。その代わりに僕らの飲食代を出してくださいよって(笑)。
ライブ配信しながらBASE(※簡易ネットショップサービス)で「ドリンク1杯500円」「おつまみ1,000円」とかを売って、おごられるまで飲めない(笑)。2回やって、色んな店回って20万円ぐらいいきました。(売れるたびに)『ありがとうございまーす!いただきまーす!』って。
大塚:もういらんねんけどって(笑)
大原:飲み切れないで余ったお金も、お店に渡しました。
吉田:楽しみですね、毎年。今年はどうなるんかなって。食べた人に『美味しかった』って言ってもらえるのが僕らとしてもめちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。そういう声聞いて、来年も頑張ろうと思いますし、活力になりますね。
伊丹直球酒場 吉田:伊丹市中央1-9−22 パールハイツ1F
コリアンキッチン ヨシダ:伊丹市中央1-7-3-1
伊丹直球酒場 吉田
伊丹市中央1-9−22 パールハイツ1F
コリアンキッチン ヨシダ
伊丹市中央1-7-3-1
GREENJAMはフード以外にも個性豊かなさまざまなお店が参加していて、出店エリアを練り歩くだけでも楽しくなる。ライブステージを背景に、あざやかに彩られたマーケットやカフェ。ここにも、GREENJAMに特別な思いを寄せる市民オーナーたちの姿がある。
アジアン雑貨ショップ「ラフエイジア」の太原佑三子さんと「Cafe Champroo(カフェ・チャンプルー)」のオーナー、米澤雅貴さんに話を聞いた。
大塚:ユミちゃん(太原さん)は、第1回からですよね。
ユミ:そうですね、ずっとお世話になって。
大原:だから(今回の取材で)お声がけしたかった。第1回からずっと出店って、結構少ない。
ユミ:第1回が10年近く前でしょ。誰が出てたっけ?
大原:溺れたエビ(の検死報告書)。
ユミ:ああ、そうやった、見てた見てた。あの時は、出店もブースもステージも同じエリアで。グラウンドも使っていたか。でも、ゆったりして全然制限もしていなかったし。なつかしい。その頃から「ラフエイジア」で出店させていただいて、もう、おんぶに抱っこでやらせていただいて、GREENJAMがあるからこそ私たちはやっていけているという(笑)。
大塚:イベントへの出店慣れをされていたっていうのも大きいですよね。僕が声かけさせてもらったんです。
ユミ:声かけていただいてありがたい。伊丹でフェスやんの?昆陽池で!?すごいじゃんって。でも、あそこの場所は絶対いいと思っていましたよ。伊丹のセントラルパークやと思っているので(笑)。
米澤:第1回は出店していなくて、最初はお客さんで行ったんです。商売やり始めた頃にGREENJAMがあるって聞いて行ってみて、めっちゃいいやんって。おもしろかったから次の年に自分も出てみたいなと思って話をして。その時に、おーちゃん(大原さん)が『カフェみたいなんをやりたい』と。今までやっていなかった場所、ちょうど、ステージとフードエリアとの間のところでいっぺんやってみよう、となったんかな。
ユミ:あそこはフードエリアとは違うの?
大原:僕ら〝癒着枠〟って呼んでいるんですけど(笑)
米澤:フードエリアは砂のグラウンドやし、昆陽池やから芝生エリアでやりたいというのがあった。芝生エリアは火気が禁止やけど、ドリンクだけならいいですかと。おーちゃん(大原さん)の方でも、カフェみたいな場所は芝生エリアに作りたいと言ってくれたから、そこで癒着が生まれ(笑)、出させてもろて。
大原:〝癒着〟と言ったらアレなんですけど、GREENJAMって飲食とかマーケットは基本、一般公募しているので、コントロールはできないんですよ。結果、どういう方々に集まっていただけるか。で、結果こういうブースが出来たねとなる。意図的に『こういうことをしたい』となると、誰かにお声がけして自分たちでコントロールしていくことも一定は必要で、そのひとつを米澤さんへ相談させていただいたんです。
米澤:そうですね。僕は伊丹で商売していますけど、みんなと仲良くしてイベント出て盛り上げようってあんまりない。けど、いっぺん見て、シンプルにこのイベントを損得抜きにしても応援したい、支援していきたいイベントやなと思いました。
大塚:チャンプルーがイベント出店って中々ないですよね。
米澤:少ない方やと思います。
大原:一匹オオカミでしょ(笑)。
米澤:なんでしょうね。僕も伊丹の人間なので、ちっちゃい頃から遊んでいた、見ていた昆陽池がこんなことに!昆陽池をこんな風にできるんやなっていうのにすごくビックリして。
ユミ:そうやんねぇ。昆陽池やけど昆陽池じゃない、あの景色はもう。ここはどこぞと思って(笑)。伊丹かと。
大原:それが関わってくださっている方々のひとつの大きい要因で、結構多くの人にあると思います。
ユミ:それぞれみんなの中の昆陽池の思い出があるから、それが共通の思いとしてここにあって、集まってくるというか……。やっぱり〝昆陽池〟というキーワードが大事なんかなって。
米澤:10年目は是非とも昆陽池にスワンボートを復活させてください(笑)。
大塚:昔ありましたもんね、気づいたらなくなっているなと。
大原:それ、マジで今年、行政に言ってみようと思っているんです(笑)。
ユミ:続けるっていうことが大事で。伊丹のブランド価値が上がったと思いますよ、GREENJAMがあって。
大原:でも、ブランド価値を上げているとか、やっている側は感覚がないんですよ。『おしゃれやなぁ』『素敵やなー』とかいうものには僕は関わっていないじゃないですか。僕はどうにか(入場)無料で成り立たせるという皿を作っているだけで。来場者さんたちが『ええイベントやな』と感じる会場内の具体の部分は出店者さんがやっているので。
大塚:そうやね。
ユミ:なんか、(大原さんと大塚さんが)ガムシャラにやっているのがすごく伝わってくるから、応援したくなる。がんばれ、がんばれ。やろうぜ、やろうぜって。
米澤:うんうん。
ユミ:ほんまにそう!それが記憶に残るよね。
大原:昆陽池でイベントを実現する難易度の高さとか、台風とか、そこがいい意味で博打のような高揚感というか(笑)、このイベントは結構、それもあると思っています。いろんな意味での難しさ、でもそれをクリアしたら最高の景色が見られる。
米澤:でも、2人がみんなを魅了してくれる感じなんですよね。
ユミ:昔、(大原さん)泣いていたもんね。
大原:(当日)喋るとすぐ泣いてしまう。準備期間は感情に起伏が生まれないように常に気を張っているので。
ユミ:攻撃というかさ、いろんな言葉をかけられるやん。「代表」と言われている人間やから、何かあったらすぐ矢面に立ってさ。それでも心が折れないのは何なんだろうって。
大原:折れていないフリをしているだけです(笑)。『そうですね。そうですね』って。だから何かのキッカケでボロボロと(泣いてしまう)。
米澤:「ラフエイジア」でハンカチ売ってます?じゃあ僕、ハンカチ買って2人に届けます(笑)。
米澤:そうですね。出た時のイメージはしっかり作っていきます、このイベントに限っては。他のイベントではあまりないですけど。何でそう思うんやろう。自分の中では〝一番大きい発表会〟みたいな感じがあるのかもしれません。
大原:みんなそうなんです。それぞれのセクションとかブース、エリアが多分その感覚です。当日はステージだけが本番じゃなくて、会場内に100ぐらいの本番がある。
米澤:(ユミさんも)他の大きなイベントの出店とは違います?
ユミ:違う、違う。GREENJAMは手作り感も見えるし、あたたか味がある。みんなで作り上げているよね、コレって。それぞれがみんな思っているんじゃないかな。
Cafe Champroo:伊丹市西台2-3-5 的場ビル1F
アジアン雑貨ショップ ラフエイジア:伊丹市東有岡2-3-5
Cafe Champroo
伊丹市西台2-3-5 的場ビル1F
アジアン雑貨ショップ ラフエイジア
伊丹市東有岡2-3-5
※この連載は、「ITAMI GREENJAM’23」開催の9月までつづきます
ITAMI GREENJAM’23
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企画制作:GREENJAM実行委員会
主催:一般社団法人GREENJAM
Written by Wakako Niikawa