インタビュー連載第1回 | 「ITAMI GREENJAM’23」昆陽池公園で開催決定〜〝市民表現のプラットフォーム〟を掲げる無料野外フェス、10年目の現在地<前編>

公開日:2023年06月24日

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより
「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

ITAMI GREENJAM’23
2023年9月17日(日)・18日(月祝)/会場:昆陽池公園

ITAMI GREENJAM’23
2023年9月17日(日)・18日(月祝)
会場:昆陽池公園

2014年に第1回が開催され、今年で10年目を迎える無料音楽フェス「ITAMI GREENJAM(伊丹グリーンジャム)」。野鳥のオアシスで伊丹市民の憩いの場「昆陽池(こやいけ)公園」を会場に本格的な野外フェスが開催されるとあって、当時は驚いた人も多かっただろう。

奇妙礼太郎、スチャダラパー、竹原ピストル、踊ってばかりの国、真心ブラザーズ、カジヒデキ、ホフディラン、ソウル・フラワー・ユニオン、PUFFY、toe、ドミコ、eastern youth、ガガガS P、etc……大手フェスにも登場する錚々たるアーティストが歴代出演者に名を連ね、今や西日本最大級の無料ローカルフェスとして音楽業界やメディアからも注目される存在感を放つまでに成長したが、「ITAMI GREENJAM」共同代表の大原智さんは、あくまで〝市民が表現を持ち寄る文化祭〟と位置付ける。

ITAMI GREENJAM提供

コロナ禍での開催中止、そして昨年の池田市開催を経て、4年ぶりに伊丹・昆陽池公園に帰ってくるGREENJAM。今年は第1弾アーティストとして、小山田壮平、THA BLUE HERB、七尾旅人、betcover!! の出演が発表された。

このたび、共同代表の大原智さん、大塚克司さんをはじめ“表現する市民たち”を取材し、伊丹が誇る唯一無二の音楽フェスの軌跡と知られざる舞台裏について、全5回の連載で紐解く。

第1回の今回は、大原さん、大塚さんら運営陣を支える強力な助っ人市民たちのもとを街ブラしながらめぐり、話を聞く。(前編)

10年目の今年は原点の地、昆陽池公園で開催〜共同代表2人の想いは

「ITAMI GREENJAM」共同代表 大原智さん。クロスロードカフェにて

「当時は、まだ〝フェス〟っていうワードにパワーがあってセンセーショナルやったんですよ。」市内のクロスロードカフェで、店主・荒木宏之さんのスマホに保存された第1回(2014年)開催の写真を見て回顧する、大原智さん。今日のような全国各地にローカル音楽フェスが群雄割拠する時代の幕開けの頃だ。

元バンドマンで音楽教室主宰の大原さんは、地元伊丹の高校の同級生で当時、市内でダンスインストラクターをしていた大塚克司さん(現・「ITAMI GREENJAM」共同代表)ら数人の仲間と共に「昆陽池でフェスを開催したい」と発案。まちづくりの担い手でもあるクロスロードカフェ・荒木さんを通じて行政と交渉し、会議を重ねて半年で第1回の開催を実現した。

2014年9月に開催された第1回「GREENJAM」。当初イベントタイトルに「ITAMI」は入っていなかった(ITAMI GREENJAM提供)

第1回は予想を大きく上回る6千人が参加、その後も参加者は増え、6年目の2019年には2日間で2万5千人が参加する無料フェスへと発展した。昨年までには、荒天・台風での中止やスケジュール変更が計4回に加え、コロナ禍中止、昆陽池での開催断念など、一筋縄ではいかないことも多くあった。 

積み重ねて迎えた10年目「出来たコミュニティをうまくぶつけたい」

—まず、10年目を迎える今年の開催にどんな想いですか?

大原:10年目、一区切りやな……。

大塚:そうやなぁ。今年10年目やから、僕の予感やけど2日間ちゃんと開催できる気がするんですよ。晴れるんちゃうかなって。

大原:(2日間開催となった2017年以降で)2018年の1回しか、2日間丸ごと開催できていないですからね。

—普通なら、予定していた2日間開催できて当たり前と思って臨むのに……。

大塚:今年も台風ちゃうかって体(テイ)になっちゃっていますからね。

大原:だから、実行委員メンバーもめちゃくちゃ心臓強いです(笑)。全然バタバタしない。去年も台風がブワーって曲がってきて。(※昨年は2日目が台風で中止)

大塚:この10年はGREENJAMを通じて「MOGURA CAFE」(※大塚さんが伊丹市中央・サンロード商店街で運営するカフェ)も誕生したし、いろんな繋がりが出来たのはすごく大きかったので。その出来たコミュニティをうまくぶつけたいな、という感じです。あの2日間でうまく表現できたら、とは思っています。

左: 大原さん右:「ITAMI GREENJAM」共同代表 大塚克司さん
—共同代表を務めるお二人の役割分担は?

大塚:GREENJAMは基本、大枠というか軸を大原が作って、僕ら周りの人間が『あ、今年もやるんやね。じゃあ、やろか』と動くんです。

大原:僕が仕組み作り屋さんで、その皿で『じゃあ、あの人ええんちゃうか』と人を集めてくる、コト起こし屋が、カツ(大塚さん)。

—良いコンビネーションですね。昨年の池田市・猪名川運動公園での初開催は、会場がゆったりしていて新たな可能性も感じました。今年は、また昆陽池に戻って開催となるのですね。

大原:結構、意見が分かれたんですよ。やっぱり昆陽池がいいという人もいたし。僕は、猪名川(池田)もいいなと。ゆとりがあって楽なんでトラブルが起きにくいし、レジャーシート敷いてぼけーっとできる、あの雰囲気いいなと。昆陽池であれは(スペースがなく)できないんで。

—それでも最終的に今年、昆陽池開催と決めたのは?

大塚:はじまりは昆陽池やったし、節目の年としてはやっぱり昆陽池がいいんちゃうかと。

大原:10年の文脈に沿った10年目を迎える、形にするとなった時に、絶対に昆陽池の方が文脈がある。それは〝場所〟という意味でも〝人〟という意味でも。実際に去年、池田に移した時に関われなくなった(在伊丹の)企業さんや団体さんもあったので。伊丹に戻った方が濃い10年目を迎えられるなと。もちろん、10年の文脈の中に池田も入っているので、池田で関わってくださった方々にも声はかけています。

大塚さん

「出演アーティスト以外の“表現者”にもスポットを当てたい」

—今回の「ITAMI ECHO」 でのGREENJAM連載企画も、大原さん側からお声がけがありました。どんな意図だったのでしょうか?

大原:よく言われるのが『あのPUFFY呼んだイベントですよね』とか。どうしても〝音楽フェス〟という括りで見られて出演アーティストばかりがフィーチャーされる。でも僕にとってGREENJAMは、音楽フェスの面を被った市民文化祭なんです。

10年目の文脈の中に、もちろんアーティストは入るんですけど、それと同列ぐらいに、『あの人にあのエリアを担当してほしいな』とか、『あの人にもう一回ブースやってほしいな』とか、『こういう関わり方してほしい』というのがあるわけです。そういう意味で僕は今、ステージに出る出演者以外もブッキングしている。

なので、今回の(連載記事の)相談をした時も、イベント告知ももちろんだけど、僕からしたら、ITAMI ECHOさんをブッキングしている感覚もあるわけなんですよ、『関わって欲しいです』と。ステージに出るアーティストも含めて、それ以外の“表現者”にもスポットを当てたいんです。

クロスロードカフェ・店主の荒木宏之さん。まちづくりの担い手として伊丹ではお馴染み。GREENJAM開催にあたっても大原さんらと行政を繋ぐなど尽力。大原さんは荒木さんのことを〝みんなのお父さん〟とたとえ親しむ

クロスロードカフェ:伊丹市中央3-2-4

クロスロードカフェ
伊丹市中央3-2-4

それぞれの立場でGREENJAMを支える“市民表現者”たち

その1|オフィシャルTシャツを手掛ける、伊丹の人気アパレルショップオーナー

音楽フェスをイメージづける顔と言っても過言ではないのが「オフィシャルTシャツ」の存在だ。オーディエンスにとって記念になるのはもちろんのこと、日常で着用することでフェス参加者としての自己表現にもなる。

GREENJAMのオフィシャルTシャツを開催3年目から毎年、デザイン・制作しているのは、阪急伊丹駅近くにあるアパレルショップ「GO!DON」。

オーナーの〝オペさん〟こと井関俊博さんは、東京の古着・アパレルショップで18年間勤めた後、故郷の伊丹に戻り同店をオープン。オリジナルアパレルも数多く手掛け、市外からも多くファンが来店するほどの知る人ぞ知る人気店で、井関さんはファッション系SNSでインフルエンサーとしても知られている。

「GO!DON」オーナー〝オペさん〟こと井関俊博さん。GO!DONにて

構想から半年かけて作られるGREENJAMオフィシャルTシャツ

—井関さんとお二人の最初の出会いは?

井関:僕が東京から帰ってきて、この店出してすぐくらいに、2人が店きてくれたんですよね。

大原:当時、伊丹で古着屋ってちょっとした事件やったんですよ。

大塚:僕、古着もこういうストリート系カルチャーもすごく好きやから、めっちゃ良い店やん!ってなって、『「GREENJAM」ってフェスやってるから出店してくださいよ』って、その年に出店してもらった感じですよね。

井関:しかもなんか『来週なんですけど』って言われて。

大塚:近々(きんきん)やったから『(出店用の)1枠作るんで』って。

井関:『昆陽池でフェスやってる』って。でも、僕の知っている伊丹ってそんなん無いから。東京で18年間仕事して帰ってきて、浦島太郎状態やから。フェスなんかやってるわけないやろって、ちょっと思った(笑)。

でも2人がおもしろかったから、じゃあ出てみよかって。それが2015年(第2回)ですね。出てみたら、嘘みたいな景色で。あの時の衝撃はいまだに覚えていますね。あの昆陽池がって……。凄いなって、尊敬しかないですよ。

左から、〝オペさん〟こと井関俊博さん、「ITAMI GREENJAM」共同代表 大原智さん、同共同代表 大塚克司さん
—GREENJAMのTシャツを作るようになったキッカケは?

大原:Tシャツ作ってくれるようになったのは、(出店の)翌年からでしたっけ?

井関:いや、翌年は俺が勝手に作ったんですよ。勝手に作ったけど(荒天で)中止になって。

—中止になって、作ったTシャツはどうされたんですか?

井関:売りました、全部。幻の2016年Tシャツ。良いモンしか作ってないから売れるんですよ(笑)。2017年からは僕が毎年、イラストを描いて。

大塚:「GO!DON」と「GREENJAM」コラボでTシャツ作ってもらっています。

井関:最初、手描きで紙にある程度構図を描いて、iPadで撮ってペンで仕上げるんです。以前はスマホで、指で描いていたからキツかった。GREENJAMのTシャツ発売の頃には毎年、スマホが壊れるんです。時々、イライラしてほったりするから(笑)。

大原:2017年から(中止の年も)毎年、作ってはいましたもんね。

井関:そうそう。半年くらい前から取り掛かっているので。枚数やらないといけないし、急に中止になろうがとりあえず作っているんですよ、毎年。あーでもない、こーでもないって構想練っている期間は長いので。

「ITAMI GREENJAM×GO!DON」オフィシャルコラボTシャツ。コロナ禍で開催中止となった2021年版「SAIKO-NO BANSAN」。写真下は、伊丹の染め職人JAVARAによるダイダイ染めを施したスペシャルバージョン(GO!DON提供)
「ITAMI GREENJAM×GO!DON」オフィシャルコラボTシャツ。コロナ禍で開催中止となった2021年版「SAIKO-NO BANSAN」。伊丹の染め職人JAVARAによるダイダイ染めを施したスペシャルバージョン(GO!DON提供)
「ITAMI GREENJAM×GO!DON」オフィシャルコラボTシャツ2022年版「百鬼夜行」(GO!DON提供)
「ITAMI GREENJAM×GO!DON」オフィシャルコラボTシャツ2022年版「百鬼夜行」(GO!DON提供)

GREENJAM共同代表の2人もリスペクトする、ものづくりへのこだわりと挑戦

井関:以前は、Tシャツのボディも糸から選んで作っていた時期もあったんですよ。コロナと戦争の影響で糸の値段が上がって作れなくなっちゃって、今は自分のデザインに合う、耐久性もあって形もよくて良い色のボディをセレクトして使っているんですけど。ボディも作っていた時には、ボディの色味からこの絵に合うっていうものを考えながらやらなあかんから、大変でしたね。

大原:すごいですよ、ほんま。僕もGREENJAMやっている人間としてめちゃくちゃわかるんですけど、毎年、毎年のプレッシャーがやばいっスよね。

井関:やばいっスね。

大原:去年を上回らなあかんじゃないですか、それはTシャツでも起こっていると思うんですよね。毎年、Tシャツ見て『ヤバ!』ってなるんで。でも、『去年の方が良かったよね』って言われたら嫌じゃないですか。

井関:そうなんですよ、うん。ちょうどこの時期になると、去年のTシャツ着ている人を(街で)見るじゃないですか。あー良いなって思って、今年のTシャツもう発注してるけど大丈夫かな……って思うんやけど。自分では去年のものを超えたと思ってるから発注しているんで。

左:井関さん、右:大原さん
—GREENJAMのTシャツ着ている人を街中で見かけるんですね。

大原:僕、何度も大阪とか神戸で目にしているんですよ。居酒屋で横になった人が着てたとか(笑)

井関:いっぺん、『ディズニーランドで着てる人見た』って、お客さんから報告ありましたね。めっちゃ嬉しい(笑)

『ダサかった』伊丹を変えたい……「GO!DON」井関さんと「GREENJAM」の共通マインド

—井関さんにとって、大原さんと大塚さんのお二人はどんな存在ですか?

井関:僕、〝若者〟と呼ばれる時期に伊丹にいなかったので、その間が抜けている。そんな中、(伊丹に帰ってきて)2人と出会って、語弊があるかもしれないけど、数少ない気を許せる人たちというか……。年齢じゃないと思うんですよ。凄い人たちに誘ってもらっているし、ヘボいと思われたくないから僕も良いTシャツを作る。で、2人は良いフェスをやる。そこの切磋琢磨じゃないですか。

左:大原さん、右:大塚さん

大塚:もう、毎日店に来てましたもんね、朝。毎日来て、わけわからん話して、あーだこーだ。

井関:中学の時にファッションに興味があって、アメ村とか行くじゃないですか。その時はヤンキーブームで、アメカジみたいな格好していると(地元の伊丹で)バカにされたりした。高校は神戸まで通っていたので、その時も、伊丹アレやなって……(笑)。

僕が10代の時は、『伊丹がダサい』というのがコンプレックスというか。19歳からアメ村で働いて、東京行って修行して20年経って、独立するなら伊丹やなって。図式を変えたいというか。大阪、神戸に伊丹で買った服で遊びに行くのが一番渋いなって。地元で買った服を着て遊びに行くって渋いじゃないですか。

—それって、『伊丹でフェスをやって人を呼びたい』というGREENJAMとも通じるものがある気がしますね。

井関:だから恵まれているんですよね、僕は。そのタイミングでこの2人と会えたのは。

大原:同じ精神から始まっている。僕も、今は伊丹中心地でのイベントにリスペクトもあるし、凄いなと思いますけど、当時は若くて尖っていたんで、『俺らの方が絶対におもしろいことできる』って。若いなりのその思いが原動力になっているので。結構、近いところがありますよね。

井関:だから仲良いんでしょうね。

左:「GO!DON」オーナーの井関さん。右:スタッフの森根詩成さん。森根さんは、元々お店のお客さんでスタッフになって5年目。GREENJAMでの出店を手伝ったことがキッカケで井関さんが一緒に働きたいと思い、スタッフに招き入れたという
—今年のオフィシャルTシャツも楽しみです。

井関:めっちゃ良いのん、作っていますので。

大塚:そうですね、カワイイのでぜひ。

※「ITAMI GREENJAM×GO!DON」オフィシャルコラボTシャツは6月25日(日)発売予定。キッズサイズもあり(デザイン等詳しくは「GO!DON」Instagramにて)。「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトまたは「GO!DON」店舗で購入可(GREENJAMウェブサイトでは6月26日以降の予定)。毎年大好評で売り切れ必至のため、ご購入はお早めに!

GO!DONにて

GO!DON:伊丹市中央1-4-12 グラディオ伊丹1F

GO!DON
伊丹市中央1-4-12 グラディオ伊丹1F

その2|伊丹随一の大規模イベントをサポートする行政担当者

公共の場である公園で大規模イベントを開催するためには行政の協力が欠かせない。「ITAMI GREENJAM」においても伊丹市が協賛して運営側と連携を図り、周辺住民の理解を得て開催できている。ただ、年々規模が大きくなるにつれ、トラブルやフラストレーションも発生しやすくなる。

そんな中で、運営の大原さん、大塚さんらが信頼を寄せる行政マンの声を聞いた。取材の協力を得たのは、伊丹市 都市活力部まち資源室 空港・にぎわい課課長 河村真吾さんと、伊丹市の外郭団体である公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団 宮村賢治さん。

左:公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団 宮村賢治さん。右:伊丹市 空港・にぎわい課課長 河村真吾さん。「東リ いたみホール」にて

GREENJAMにはお客として参加していたが…運営と本気で向き合う行政マン

—市の職員である河村さんと「ITAMI GREENJAM」との接点は?

河村:接点は単純に仕事ですよね。

大原:いや、違う違う(笑)。僕の認識と違いますよ、それ。仕事やけど、河村さんが救ってくれたと思っているんです。当時、ひどかったですから、(伊丹市の)公園課と(空港・)にぎわい課。連絡先も教えてくれへんし……。

—何があったのですか?

河村:2019年までは、市役所は『場所を貸してあげます』というだけだったんです。2019年はPUFFYが出演して(会場の人数が)どえらいことになって。ただ、その時は僕はいち参加者で、まだ市の職員としては関わっていませんでした。前の年も家族でお客さんとして参加していて。それで、2019年のえらい状況を見て、その後から(大原さんたちと)話し始めて。役所の窓口もきちんとなっていないと聞いて、これはあかんやろうと思って、そこから関わりだしました。

大原:これだけの規模のイベントをするにあたって、然るべき(市の)体制があるじゃないですか。市は場所を貸しているから『運営の責任はそちらですよ』というのは、もちろんそうなんですけど。とは言え、何かあった時の(当日の)連絡先・窓口を行政は用意しないとあかんやろうし、それができていなかった。

河村さん

河村:たしかにその通りで、伊丹市の場所、昆陽池公園でやっているので、伊丹市のイベントと勘違いされてもおかしくない中で開催しています。個人的に大きいのは、僕はその当時、(仕事で)花火大会を担当していたんです。大きいイベントをやるしんどさとか難しさもわかっていたので、これはちょっとマズいだろうなと。そこからが関わるキッカケですね。

大原:今『たしかにその通りで』と河村さんが言ってくれたように、『おかしくないですか?』ということに対して『たしかにおかしいよね』と初めて言ってくれた(市の)人やったんです。

—実際に市に連絡するべきトラブルが現場であったのですか?

大原:ありました。2019年は荒天の影響で2日目が昼から開催になって、タイムテーブルがパツパツでおしてしまった。周辺住民の方々には終了時間を事前にお伝えしているので、『終了予定時間になっても終わっていなかった』というクレームが入ったんですよ。運営側としては現場での判断がすごく難しかったんです。進行上『はい、終わりです』とも言えないし、でも言わないといけない。その時こそ、まさに相談の連絡先が必要。伊丹の公園に何万人が集まることが(事前に)分かっているのに、市の連絡窓口がないっておかしいじゃないですか。

河村:イベントが終わってから後出しでルールを言うのではなくて、予めきちんと注意事項はお互い(市と運営側が)確認の上で次回は挑もうよと。公園課は、公園の使い方を指導する立場。でもイベントをする中においてがんじがらめのルールを敷くと難しいし、下手すると逆に危険を伴うこともあります。僕が関わらないといけないと思ったのは、そのあたりの緩衝材というか、ルールの中で『こういう角度ならいけるんじゃないか』という役割が必要だなと。ただ、それから(コロナ禍に入り)僕は一回も本番をやっていないんです。

左: 河村さん、右:「ITAMI GREENJAM」共同代表 大原智さん

GREENJAMは『守らなあかんイベント』〜職員の思いが市を動かす

—お客さんとして参加していた河村さんが、市としても動いてくださった。

大原:市としてというか、個人ですよね。職員個人が動かないと市は動けないんです。こんなこと言うとアレですけど……行政職員からすると、個人的におかしいなと思うことがあっても職員の立場があるわけで、そこの葛藤の中で、立場的にはわざわざ取り組む必要性は正直ないですよね。でも、(河村さんは)そこをやってくださった人。

—どんな思いで動かれた?

河村:そんなに深くは考えていないですけど、守らないとあかんイベントだなと。このイベントは伊丹で続けてほしいという、その思いです。GREENJAMは2日間で約3万人が参加してくれます。市内の人も楽しんでくれますが、市外の人も多いんですよね。伊丹市の魅力をPRできるし、客層も若くてファミリー層も多い。行政がやろうとしてもなかなか実現は難しいので、そこは魅力です。最大の魅力は、市民が作り上げているということですね。

「ITAMI GREENJAM 2017」の市民ステージ。市民自らが歌やダンスを披露して作り上げる(ITAMI GREENJAM提供)
「ITAMI GREENJAM 2017」。会場内は、親子で楽しめるスペースも豊富。オブジェも全て市民らの手作り(ITAMI GREENJAM提供)
—2019年開催の後はコロナ禍に入り、2年間は開催中止。昨年は、コロナの影響が続く中で昆陽池の使用許可がおりずに池田市に会場を移しましたが、伊丹市とはどんなやりとりが?

大原:『なんで昆陽池使われへんねん』という戦いはありましたけど、めちゃくちゃ建設的な時間は持てたんです。

河村:はじめから『あかん』ではなかったんですよ。市としてもコロナ禍でやれる可能性は残しておきたかった。できるならやってほしいけど、ただ、いいのだろうかと。コロナの中で開催した時に第三者が見ていいと思ってくれるのだろうかというイメージの問題もあるので、その葛藤はすごくありましたね。

大原:お互い可能性を探るという意味では、あくまで前を向いた協議でした。僕自身も行政そして河村さんに対して失礼がないように、河村さんも同様に僕たちの立場をすごく分かってくれていた。

(コロナで開催中止になった)2021年は、僕ら実行委員メンバー20人くらいが集まる場に河村さんが上司を連れてきてくださって、メンバーみんなの『こういう思いでGREENJAMをやっている』という声を聞いてくれて。まぁ、僕が要請したんですけど(笑)。でも、上司の方を連れて来るって大変やと思うんです。大塚も含めて実行委員メンバーは普段、(行政とのやりとりは)僕からの話しか聞かないので、『何言ってんねん、行政』となりがち。でも、顔を合わせるとまた変わる。河村さんの上司が、来ることを了承してくださったのも凄いですよね。

—それまでに何年も伊丹で開催してきて関係性ができていたこともあるのでしょうね。

河村:市としても、単なる音楽フェスとして捉えていないんですね。

GREENJAMボランティアスタッフとしての経験が、市内のイベント運営のチカラに

宮村さん
—宮村さんは、市の外郭団体の職員ですが、GREENJAMにはボランティアスタッフとして参加されているそうですね。

大原:宮村さんは、ふつうに実行委員スタッフです。備品関係を手配したり、〝スーパー雑用係〟みたいな(笑)。結構、実働で言うと大変。だからいつも機嫌悪いんです(笑)。

宮村:そうなんですよ。片付けの時とか特に怒るんです。皆さん疲れ果てている時にそこからまた片付けしないといけないので。

大原:いたみ文化・スポーツ財団の職員としての立場と、宮村さん個人の立場があって、GREENJAMは個人の立場で有給使ってプライベートとして手伝ってくださっているんですけど、財団職員の立場でも、うち(一般社団法人GREENJAM)と一緒に、今いる「東リ いたみホール」でイベントをやっています。プライベートでGREENJAMに入ってくれているからこそ価値をわかってくれている。それで、仕事の立場でも僕たちをうまいこと転用してくれる。

宮村:ここでやった「光のシェルター」とかね。(※「光のシェルター」2021年12月開催。「東リ いたみホール」地下多目的ホールが映像・光・音楽に包まれた、体験型の特別展覧会。宮村さんが所属する公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団が主催し、企画制作は一般社団法人GREENJAMが担当。伊丹ゆかりのミュージシャンやITAMI GREENJAMゆかりのクリエイターらが参加した)

左:大原さん、「ITAMI GREENJAM」共同代表 大塚さん
—GREENJAM以外のイベントでも企画や制作をされているのですね。

大原:そうです。

宮村:GREENJAMみたいな凄いイベントをできる人たちは、こちらからしたら色々とやってほしい。アイデアをいっぱい持っていらっしゃるし、動きも繋がりも幅広くあるので。だから、何かにつけてご相談させていただいて、先ほど言った展覧会や大ホールを使ったライブを企画してもらったり。GREENJAMさんだからこそできることをやってもらいたいということで、色々お願いをして一緒にやらせてもらっています。

大原:機会を作ってくださっているんですよ。

宮村:GREENJAMは最初から会議も参加させてもらっていますけど、大原さんら今30代後半の世代の人たちにおもしろい人がいっぱいいて、ビックリしたんです。僕たちは財団として〝文化〟と言っていますので、伊丹の文化をこれからどんどんおもしろくしていく。クラシック、オーケストラとか色々文化もありますけど、その中で若者の文化をこれだけ伊丹で育てて大きくできる人たちというのは、あまりいないんじゃないかな。

大原さん大塚さんより下の世代の人たちがどんどんこの世代の人たちのようになってほしいなと本当に思っています。大原さん、大塚さんは下の世代を巻き込む動きもどんどんされています。

大原:僕らが次世代をキャッチしてどうアウトプットするかという、その場は宮村さんたちが作ってくれるのでそれは大きいです。本来、行政はストップをかける役割もある。でも、この二人(河村さん・宮村さん)は、そこに挑戦してくれているという感じですね。

「東リ いたみホール」にて

東リ いたみホール(伊丹市立文化会館):伊丹市宮ノ前1-1-3

東リ いたみホール
(伊丹市立文化会館)
伊丹市宮ノ前1-1-3

<前編はここまで/後編はこちら


ITAMI GREENJAM’23

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企画制作:GREENJAM実行委員会
主催:一般社団法人GREENJAM

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