インタビュー連載第3回 | 「ITAMI GREENJAM’23」昆陽池公園で開催決定〜10年目の無料野外フェス、子どもたちと共に

公開日:2023年08月20日

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

2014年の第1回開催から今年で10年目を迎える、野外音楽フェス「ITAMI GREENJAM’23」。

“市民表現のプラットホーム”を掲げる伊丹最大級のイベントの軌跡と舞台裏を紐解く全5回の連載の第3回。

連載第1回「”市民表現のプラットフォーム”を掲げる無料野外フェス、10年目の現在地」

連載第2回「10年目の無料野外フェス、まちを越え万博と連携」

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

先日、 最終アーティスト&日割り情報が解禁され、下津光史(踊ってばかりの国)、スチャダラパーなどの新たな6組に加え、市内中学校の吹奏楽部から若手アーティストまで、ITAMI GREENJAMならではの多彩なステージに登場する出演者が発表された。

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

また、8月19日より、住友総合グランドLIVEエリア(500円/Derailleur Brew Worksによる記念オリジナルドリンク付)のオフィシャル先行抽選受付がスタート(申し込み期間は9月4日(月)23:59まで)。
※昆陽池公園エリアで展開されるステージは鑑賞無料

新たな挑戦に取り組みながら、4年ぶりに昆陽池公園に帰ってくるITAMI GREENJAM。

“市民表現のプラットホーム”を掲げる同フェスは、毎回、多くの子どもたちも参加している。

今回は、そんな子どもたちの活動をサポートしながら、自らもGREENJAMを通じて表現を行なっている、母親スタッフ2人に話を聞いた。

テナント複合施設「POT」内「きのね写真館」にて

子どもたちが主役の「KIDs JAM」〜企画する大人も表現を楽しむ

市内の幼稚園で子どもたちが準備(ITAMI GREENJAM提供)

伊丹市内の幼稚園の教室で、子どもたちが楽しげに何かを作っている。ITAMI GREENJAM’23の会場内デコレーションパーツだ。

子どもたちが遊びながら生み出し、多くの人が集まる場を彩る。

ITAMI GREENJAMは、開催1年目から子どもたちが参加できる場づくりを行なっていて、親子連れの参加者も多い。

「KIDs JAM」エリア(ITAMI GREENJAM提供)

毎回2日間でのべ3,000人以上の子どもたちでにぎわう「KIDs JAM」エリアは、さまざまなスキルを持った子育て中の母親や父親たちが企画・制作している。

その中心となっているのが、市内在住で保育士の経験を持ち、5人の子の母親でもある山上桂代さん。

左:山上さん、右:宮前さん

第1回開催の2014年、GREENJAM共同代表の大塚克司さんから声をかけられたのが参加のキッカケだったという。

私の子どもが、大塚さんがインストラクターを務めるダンス教室に通っていたんです。

大塚さんから開催の1カ月くらい前に「子どものためのブースを作ってくれへん?」と相談を受けて。「わかりました」と言ったものの、何をやったらいいのか(笑)。準備期間もないし、私と同じ保育士でママの友達に手伝ってもらいました。

初回に企画したのは「ビュンビュンごま」(※両手で糸を引っ張り、ビュンビュンと音を立てて回るこまを作るワークショップ。

山上さんは、家族総出で廃材の段ボールを切って600人分のキットを用意。当日は、子どもたちが色を塗ったりシールを貼ったりして、それぞれのオリジナルビュンビュンごまを作って楽しんだ。

2年目の2015年からはブースに「KIDs JAM」と名前がつき、子どもたちのためのフェスエリアとして定着。母親や父親である市民が特技を生かして運営に参加し、ペットボトル素材で作る空気砲やサッカーのワークショップなど、これまでにさまざまな企画が生み出された。

2015年「KIDs JAM」の様子(ITAMI GREENJAM提供)
左:山上さん、右:宮前さん

山上さんは、前述のビュンビュンごまをはじめ、理科の実験や廃材を生かした工作など、身近なものを使って楽しめることにこだわって企画してきた。

スマホやゲームに慣れてしまっているけど「お金をかけなくても楽しく遊べるよ」ということを子どもたちに知ってほしくて。子どもたちだけじゃなくて、一緒に参加してくれたお父さんやお母さんも「なつかしい」「こんなことできるんだ」と楽しんでくれて、私もうれしいです。

中でも毎年大人気なのが、工事現場監督をしている山上さんの夫が、測量計を用いて作る本格迷路。大雨で開催中止になった年は、ボランティアスタッフらと共に作り上げたダンボール製の迷路が使われないまま崩れ、悔しい思いもした。

人気エリアだけに、毎年、良いものを作り上げることに頭を悩ませることもあるというが、山上さんをはじめ運営に参加する大人たち自身が表現を楽しむ場にもなっている。

子どもの“得意”を生かした「子ども実行委員」と「子ども取材チーム」

「グリーンジャム子ども実行委員」の様子(ITAMI GREENJAM提供)

GREENJAMにおける子どもたちのための企画は、当日体験することだけではない。2018年に発足したのが「グリーンジャム子ども実行委員」。

メンバーに応募した子どもたちでチームを組み、開催日を含めて5回の会議で、GREENJAM当日に何を行うかを企画、準備し、運営する。

「グリーンジャム子ども取材チーム」の様子(ITAMI GREENJAM提供)
「グリーンジャム子ども取材チーム」の様子(ITAMI GREENJAM提供)

また、「グリーンジャム子ども取材チーム」は、子どもがカメラマンや記者をつとめ、子どもならではの目線でGREENJAMを取材し、伝える。

宮前さん

両コンテンツを生み出し、子どもたちをサポートしているのが、「きのね写真館」(伊丹市中央)を夫婦で営む、カメラマンの宮前亜沙美さん。

子どもたち主体の活動チームが誕生するに至ったのは、宮前さん自身が「KIDsJAM」の運営を手伝って感じた思いからだという。

運営に関わらせていただいて、いろんな人が、それぞれの資質や得意なことを生かして持ち寄れば、こんな素敵な企画やフェスが生み出せるんだっていうことにすごく感動して。多くの人に喜んでもらえて、自分も達成感がありました。

(開催までの)過程で感じたことがたくさんあったので、子どもたちにも過程の部分からそのまま体験して感じてほしいと思って、子どもたち自身が企画して実行していく『子ども実行委員』を提案したんです。

「きのね写真館」

実は、宮前さんも写真館を開業する前に、保育士として働いていた経験を持つ。

今、学校や保育園でも、「みんなちがって、みんないい」とか「個性を大切に」とかスローガンを掲げていますけど、それを発揮する場ってすごく少ないんです。

でも、地域のイベントだったら、子どもたちにそれを目一杯やらせてあげられるかなって。それが自己肯定感というか、自分という人を知って「これでいいんや」って思えたり、それを生かしたり、(子ども同士で)交換したりということに繋がればうれしいです。

左:山上さん、右:宮前さん

「グリーンジャム子ども実行委員」は、大人がサポートするものの、子どもたちの想像力や発想を存分に生かすために自分たちで考えてもらう。企画を練り上げる過程に決まりごとはなく、子どもたちの“得意”が発揮される場となる。

「グリーンジャム子ども実行委員」プレゼンテーションの様子(ITAMI GREENJAM提供)
「グリーンジャム子ども実行委員」プレゼンテーションの様子(ITAMI GREENJAM提供)

子どもたちが自分で「これをやってみたい」って手をあげたり、言葉で伝えるのが苦手な子はプレゼンテーションで絵を使って表現したり、伝える方法は一つじゃないっていうところから始めます。

そうすると、「自分の得意なことを生かして人に伝えられた」ということで子どもが自信に満ち溢れていくんです。私たちは「得意なことだけやればいいよ」って言っているんですけど、「苦手なこともやってみようかな」って挑戦していく姿が見られることもあるんですよ。

(宮前さん)
「グリーンジャム子ども実行委員」の様子(ITAMI GREENJAM提供)
「グリーンジャム子ども実行委員」の様子(ITAMI GREENJAM提供)

初対面の人たちが集まり、チームとなって一つのことを作り上げるというのは、大人であっても容易なことではないが、宮前さんたちは、子どもたちの可能性をアシストする。

話し合う時間を多く設けて、それぞれが自分の思っている意見を出していいという雰囲気を作り出しているし、聞く方も、何か思うことがあってもそれを否定するんじゃなくて、一旦受け入れた上で言うという形をとっています。

言われたことをやるんじゃなくて自発的に動いているから、子どもたちもワクワクしていていいモードになります。

会場での「グリーンジャム子ども実行委員」の様子(ITAMI GREENJAM提供)

過去に「子どもフリーマーケット」や「ペットボトルボウリング」、会場内のゴミを集めて景品をもらう「ゴミ拾いゲーム」などを子どもたちが企画・運営し、開催当日は大盛り上がりとなった。

子ども取材チームによる新聞(ITAMI GREENJAM提供)
子ども取材チームによる新聞(ITAMI GREENJAM提供)
子ども取材チームによる新聞(ITAMI GREENJAM提供)

「できない」と決めつけるのではなく「どんなことならできるのか」を子どもたちで考える

この3年間はコロナ禍で子どもたちも辛い時間を過ごしてきた。しかし、GREENJAM自体の開催が中止となった年でも、表現することをあきらめなかった。

左:山上さん、右:宮前さん

子どもたちも他校生と交流できない時期があって、zoom(※オンライン会議システム)を使って打ち合わせをしたり、なかなか難しかったです。

でも「コロナだから子ども実行委員も中止」と言ってしまうんじゃなくて、「こんなことならできるんじゃないか」「この方法はどうか」って、子どもたちと話し合いました。その中で子どもたちから出てきたのが「YouTubeでの動画の発信」だったんです。

(宮前さん)

ソーシャルディスタンスを保った糸電話、ボールを転がすゲーム……。

学校行事も軒並み中止となり表現の場が奪われる中で、メンバーの子どもたちは『コロナの中で話し合って感じたこと』を画用紙に書き、精一杯の発信を行なった。

これらは、2020年「ITAMI GREENJAM」中止の代替として市内3か所で分散開催された、市民文化祭「ITAMI CITY JAM」へと繋がった。

2020年「ITAMI CITY JAM」三軒寺前広場会場の高校生吹奏楽部演奏の様子(ITAMI GREENJAM提供)
2020年「ITAMI CITY JAM」イオンモール会場「PAINT ART MALL」の様子(ITAMI GREENJAM提供)
2020年「ITAMI CITY JAM」イズミヤ会場「命の渚コンサート」によるステージの様子(ITAMI GREENJAM提供)
ケーブルテレビ番組「GREENJAM TV」の様子(ITAMI GREENJAM提供)

また、GREENJAM本体の実行委員がコロナ禍で行なったケーブルテレビの番組制作(「GREENJAM TV」内「everGREENLIVE」)を子どもたちが取材し、「グリーンジャム子ども取材チーム」が始動することとなった。

ケーブルテレビの番組制作(「GREENJAM TV」内「everGREENLIVE」)を子どもたちが取材(ITAMI GREENJAM提供)

今年は新たな挑戦も始めている。これまでは予算が与えられた中で子どもたちが企画していたが、お金を生み出す仕組みから知ってもらおうと宮前さんは考えた。市内のお店で職業体験をして働いた対価として金券をもらい、その資金を元に企画を練るという。

「人生観が変わった」〜子どもたちをサポートすることで大人にも生まれた熱い想い

GREENJAMを運営するスタッフは、基本的にボランティアだ。体験を楽しむ子どもたちは別としても、忙しい大人が時間も労力も惜しまずに、なぜここまで動けるのだろうか。

左:山上さん、右:宮前さん

第1回から運営に携わり、「KIDsJAM」を支えて10年目となる山上さんは語る。

最近、子どもも大人も個々にスマホをしていたり家族の時間が薄れる中で、「KIDs JAM」に来てくれた親子やおじいちゃん、おばあちゃんの顔、落ち葉を踏みしめて楽しむ姿や、何度も迷路を回っている姿を見ると、「やってよかったな」「来年もまた頑張ろう」って思えます。日常生活で、「迷路楽しかったよ」って声をかけてもらえることもあって。

私は5人の子育てをしたけど、「子どもが小さいうちにもっとこんなことをしてあげればよかった」って思うことがたくさんありました。だから、会場に来る子どもたちには、小さい頃にいっぱい楽しんで思い出を作ってもらいたいんです。

左:山上さん、右:宮前さん

山上さんは時折、目に涙を浮かべなら言葉を続ける。

GREENJAMがどんどん大きくなって、自分がやっていることと求められていることが違うんじゃないかって悩んで、辞めたいと思ったこともあります。

私自身、人に頼むのが下手で自分一人で抱え込んで辛くなったりしたけど、助けてくれる家族やママ友がいて、やっぱりつながることって大事やなって。一人の主婦でもやればできるって思えるのもあるし、自分の能力を活かせる場を作ってもらって、「私はこれがやりたかったんや」って気づくこともできました。

山上さんは、GREENJAMでの活動を機に、伊丹市立図書館ことば蔵(伊丹市宮ノ前)で「リトミック教室」(※体を動かして音楽を楽しみ子どもの表現を育む音楽教育)を開催するなど、新たな挑戦も始めた。

「子ども実行委員」を支える宮前さんも、GREENJAMを通じ、保育士在職中には気づけなかった、子どもたちと自分自身の可能性に向き合えていると話す。

保育士って全てを一人でこなすことが求められるんです。でも、GREENJAMに関わると、そうじゃない世界が広がっていて「あ、10全部やるんじゃなくて自分の得意な3の部分だけやればいいんだ」って気づけました。キッカケをもらって人生観が変わったし、自分が大事にしたいことも明確になったんです。

実行委員の子どもたちも同じで、何かすごいものを持ち帰ってもらおうとは思っていなくて、GREENJAMをキッカケに「考えることが楽しくなってきた」と言う子どもたちが、学校や家に帰った時に生かしてほしい。ここが完結ではなく始まりで、私もそれを楽しみに思えるから続けています。

左:山上さん、右:宮前さん

子どもを中心に大人にも輪が広がり、日常生活に彩りや生きる楽しみを生み出している。GREENJAMは並の“市民文化祭”ではなかった。

今年の「KIDsJAM」や「子ども実行委員」「子ども取材チーム」がどんな企画を展開してくれるのか。子どもたちがこの経験を生かして、どんな成長を遂げていくのか。楽しみでしかない。


ITAMI GREENJAM’23

2023年9月17日(日)・18日(月祝)

会場:昆陽池公園

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企画制作:GREENJAM実行委員会
主催:一般社団法人GREENJAM

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