インタビュー連載第4回 | 「ITAMI GREENJAM’23」昆陽池公園で開催決定〜10年目の無料野外フェス、GREENJAMに共鳴する企業の人々

公開日:2023年09月02日

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

2014年の第1回開催から今年で10年目を迎える、野外音楽フェス「ITAMI GREENJAM’23」。

西日本最大級の無料音楽フェスの軌跡と舞台裏を紐解く全5回の連載の第4回。

連載第1回「”市民表現のプラットフォーム”を掲げる無料野外フェス、10年目の現在地」
連載第2回「10年目の無料野外フェス、まちを越え万博と連携」
連載第3回「10年目の無料野外フェス、子どもたちと共に」

市民誰もが自由に参加し、表現するフェスとして定着したGREENJAMが、入場無料(今年は住友総合グランドエリアのみ500円※)を維持して運営を続けてられているのは、スポンサー企業からの協賛の力が大きい。
Derailleur Brew Worksによる記念オリジナルドリンク付/9月4日までオフィシャル先行抽選受付中

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

協賛企業に話を聞くと、単に事業のPRにとどまらず、GREENJAMの取り組みに賛同し、共にフェスを作り上げていきたいという、企業担当者たちの思いが潜んでいた。

今回は、協賛する2つの企業の担当者を取材した。

大手アパレルメーカー「アダストリア」が協賛

地域の人が楽しみながら社会課題解決

グローバルワーク、ニコアンド、ローリーズファーム、スタディオクリップ……これらのブランド名のどれか1つでも、ショッピングモールで見かけたり、実際に購入したりしてファッションを楽しんでいるという人も少なくないだろう。

運営しているのは、株式会社アダストリアで、20以上の人気アパレルブランドを展開するカジュアル衣料品メーカーだ。

株式会社アダストリア提供

GREENJAMへの協賛は、今年で3回目。2018年にサポーターTシャツの提供を行ったほか、昨年までに、サコッシュへのプリントアートやリユースの衣料品を使ったうちわ作りのワークショップ、衣料回収のブースを設け、会場で人気を博してきた。

今年は、ティーンズ向けブランドの「レピピアルマリオ」と、アダストリアの子会社(アドアーリンク)が展開する、サスティナビリティを目的とした新業態「オフストア」の2つでブースを展開予定だ。

株式会社アダストリア提供
株式会社アドアーリンク提供

アパレル業界が抱える社会課題を解決する取り組みをGREENJAMの参加者に楽しみながら知ってもらいたいという企業の思いがある。

株式会社アドアーリンク サーキュラー事業部
営業統括 阿部大樹さん
(株式会社アドアーリンク提供)

株式会社アドアーリンク サーキュラー事業部 営業統括の阿部大樹さんは、こう話す。

昨今「大量生産・大量消費・大量廃棄」という言葉を耳にしますが、店頭で売れ残ってしまった商品は、少なからず焼却処分や埋め立て処分され、環境破壊に繋がってしまっていたことも事実と言えます。

弊社では、商品を一枚たりとも廃棄することなく、どう循環させてお客さまに届けるかということをいちばんの目的にしたんです。

この考えから生まれたのが、先にあげた「オフストア」。

店舗では、型落ちの商品やサンプル品を安く提供するほか、ワークショップで、廃棄予定だった洋服の生地を染め替えたり、無地のTシャツに絵を描いたり、カバンや雑貨などに生まれ変わらせたりして、洋服に新たな価値を見出している。

オフストアの「オフ」は、割引ではなく、「あらゆる境界線をなくす」ことを意味しているという。

「オフストア」店舗でのワークショップの様子
(株式会社アドアーリンク提供)

廃棄されてしまう運命にあった洋服を安売りするのではなく、「アップサイクル」(※捨てられてしまうものに再び手を加えて、新たな製品として生まれ変わらせること)を目指しています。一度は売れ残ってしまった洋服も、姿形を変えてより多くのお客さまの手に届けば、循環が実現できる。

ワークショップを通して、楽しいことをやっていた先に、実は、知らず知らずの内に、地球環境に良いことをやっていたんだということに繋げたいというのが私たちの事業です。

(阿部さん)

今年のITAMI GREENJAMにおいても、サンプルの衣料品を販売するほか、子どもから大人まで楽しめる、売れ残りの服を使ったワークショップを開催予定だという。

「オフストア」京都洛南店 マネジャー 松田祥さん
(株式会社アドアーリンク提供)

昨年のGREENJAM会場で、ワークショップスタッフとして参加した「オフストア」京都洛南店 マネジャーの松田祥さんが、参加者のようすについて話してくれた。

うちわを作るワークショップで、あるお子さんが、1時間ほどかけて芸術が爆発したようなうちわを完成させたんです。親御さんがすごく喜んで『額に飾るわ』『本当に来てよかった』と言っていただけたことが印象に残っています。

素敵な体験が生まれるのは嬉しいことなので、皆さんの何かのきっかけになればなと思っています。

GREENJAMに感じた親和性

こうした同社の取り組みや理念がGREENJAMとも通じ、協賛を続けていると阿部さんは話す。

私たちが掲げる3つの『P』があって、一つはProduct、次にPeopleとPlay。地域に暮らす人々(People)と一緒になって、生活そのものを楽しむ(Play)ということなんです。

GREENJAMは地域の人たちが集まり、音楽やフェスを楽しんでいます。地域のお客さまが無理なく楽しんで事業に参加していただくということは、まさに私たちが核としていることで、GREENJAMとの親和性を感じたことが参加の決め手です。

アダストリア社もサポート。
池田市で開催したGREENJAM’22の様子
(ITAMI GREENJAM提供)

GREENJAM共同代表の大原智さんも、このように話す。

参加者が知らず知らずの内に地域貢献しているっていうところに、共通点を感じましたね。

GREENJAMでも、みんな、地域活性化とか考えずに自分がやりたいことを表現して、それが知らない間に地域貢献になっている。日常でも新たなコミュニティを産んで、また次のGREENJAMに生かされる、循環しているんです。すごく似ていますよね。

今年の「レピピアルマリオ」「オフストア」のワークショショップブースでも、多くの笑顔と共に、「知らず知らずの社会貢献」が生まれることだろう。

GREENJAMメインスポンサーへ〜「シクロ」

ボーダーレスな場づくりに共感

今年のITAMI GREENJAM‘23メインスポンサーとして社名が刻まれたのが、大阪・西成の介護医療サービス「株式会社シクロ」。

「株式会社シクロ」ウェブサイトより

GRENNJAMへの並々ならぬ熱い思いを語ってくれたのが、同社の代表取締役・山﨑昌宣さんである。

株式会社シクロ 代表取締役 山﨑昌宣さん
(株式会社シクロ提供)

同社は介護医療の会社でありながら、クラフトビール事業「Derailleur Brew Works」も手がけ、山﨑さんは同事業の代表も務めている。

今年4月には、ビールを楽しむイベントとして、一般社団法人GREENJAMの企画・制作のもと、無料音楽フェス「坂ノ上音楽祭」を、てんしば(大阪・天王寺公園)にて初開催した。

「坂ノ上音楽祭」当日の様子(株式会社シクロ提供)

山﨑さんは、ITAMI GREENJAMへ客として何度か参加したことがあった。GREENJAMの「誰でも自由に参加できる場づくり」に共感し、自らの音楽フェスを企画・制作してもらえるよう、ラブコールを送って実現したという。

一見フェスとは関係ない人たちや、子どもたちが自然に集まれている、当たり前のようにベビーカーを押している人もいれば、高齢者もいる。全ての人をフィーチャーしているフェスが、ITAMI GRENNJAMだったんですね。音楽を媒介にして、これまで全然繋がらなかったであろう人たちの境界をなくして繋げていくというところが、一番惚れ込んだ部分です。

それに、多様性があって間口は広いんですけど、ただ場を用意しているだけに見えて、みんなが同じベクトルに向かって一つの渦になっている。その仕掛けを作り出せているのが、他にはない価値だと思います。

(山﨑さん)
「坂ノ上音楽祭」当日の様子(株式会社シクロ提供)

GREENJAMとタッグを組んで開催した「坂ノ上音楽祭」も、ボーダーレスな場を目指し、入場無料で開催。結果、さまざまな年齢層や地域の人も参加するフェスとなり、成功をおさめた。

通天閣をバックに音が鳴り、音楽好きの人だけじゃなく親子連れが参加してくれたり、公園を普段から生活動線にしているおじいちゃん、おばあちゃんも最後までライブを見てくれたり……。僕自身も、あんな景色をてんしばで見られるんだ、という新鮮な驚きでした。

(山﨑さん)

「お兄ちゃんフェス」に恩返しを
〜オリジナルレシピのスペシャルドリンクを提供

「坂ノ上音楽祭」から見て「お兄ちゃん」に当たるフェスに恩返しがしたい……そう山﨑さんは考え、今年のITAMI GREENJAMでメインスポンサーを買って出た。

クラフトビールや飲食事業も手がける同社は、GREENJAMでオリジナルドリンクを提供することとなった。

「Derailleur Brew Works」ウェブサイトより

住友総合グランドLIVEエリアのチケット(500円)の購入者が手にすることになる、Derailleur Brew Worksのスペシャルドリンクだ。

飲食事業のスタッフがレシピを考案し、オリジナルビールと、アップルレモネード(ノンアルコール)の2種類を用意。原材料には、「たみまるレモン」(※冬季限定の伊丹産のレモン)と同品種のワイヤーレモンも使用されているとのこと。

住友総合グランドLIVEエリアのチケット購入者に提供される「Derailleur Brew Works」のスペシャルドリンク
(ITAMI GREENJAM提供)

ドリンク提供と合わせ、メインスポンサーに手を挙げた理由を山﨑さんは話す。

GREENJAMが経済的な理由で、何かコンテンツを削らないといけないなら、それをしなくていい選択肢をうちの会社で提供したかったんです。

僕たちの投資によって、新しいGREENJAMの景色が見られるならそれはすごく価値のあることですし、そこで見たものを僕たちはまた何かで生かせるんです。

人情厚いタニマチともいうべき精神でGREENJAMを支えている山﨑さん。

ITAMI GREENJAM’17で共同代表の大原智さんが
挨拶で感極まる様子(ITAMI GREENJAM提供)

この熱いスポンサードを受けて、GREENJAM共同代表の大原智さんは話す。

ITAMI GREENJAMの為だけにオリジナルドリンクを何千本も生産してくださるってめちゃくちゃ嬉しいですが、さすがに……と思って、入場料で得られるドリンク収入をドリンク制作費としてお渡しすることも提案させていただいたのですが、山﨑さんはそれさえも「結構ですよ」とおっしゃってくださって……。

プレッシャーでもありますが(笑)、山﨑さんが、GREENJAMの価値を深いところまで理解して応援してくださっているのは本当に嬉しいですね。

「坂ノ上音楽祭」当日の様子(株式会社シクロ提供)

実は、山﨑さんと大原さんは共に元バンドマンで、ミュージシャンの道を辞したという共通の過去も持つ。

夢破れた者同士っていうのは大事な共通点なのかも(笑)。

大原さんがそう話し、山﨑さんも呼応して笑う。

スペシャルドリンクを片手に、今年のITAMI GREENJAMではどんな新しい景色が見られるのだろうか。

協賛企業の人々の思いも乗せたコンテンツにも、ぜひ注目してほしい。


ITAMI GREENJAM’23

2023年9月17日(日)・18日(月祝)

会場:昆陽池公園

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企画制作:GREENJAM実行委員会
主催:一般社団法人GREENJAM

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