インタビュー連載第5回 | 10年目の「ITAMI GREENJAM’23」昆陽池公園でいよいよ開催!〜出演アーティスト【ガガガSP編】

公開日:2023年09月15日

「ITAMI GREENJAM’23」ウェブサイトより

2014年の第1回開催から今年で10年目を迎える、野外音楽フェス「ITAMI GREENJAM’23」。

西日本最大級の無料音楽フェスの軌跡と舞台裏を紐解く全5回の連載の最終回<後編・ガガガSP>。

前編・nayutaはこちら

連載第1回「”市民表現のプラットフォーム”を掲げる無料野外フェス、10年目の現在地」
連載第2回「10年目の無料野外フェス、まちを越え万博と連携」
連載第3回「10年目の無料野外フェス、子どもたちと共に」
連載第4回「GREENJAMに共鳴する企業の人々」
連載第5回前編「昆陽池公園でいよいよ開催!〜出演アーティスト【nayuta編】

連載の最後は、ITAMI GREENJAM’23のステージでも2日目の大トリを飾る、ガガガSPのボーカル・コザック前田さん。

言わずと知れた神戸発の青春パンクロックバンドで、魂込めた熱いライブがGREENJAMでもおなじみ。

2019年のステージで初めて出演となったがGREENJAM共同代表・大原智さんとコザック前田さんの出会いは20年以上前に遡る。いや、大原少年がガガガS Pのライブに魅せられたのは、もう30年近く前にもなる。大原さんは「僕そのものと言っていいほど影響を受けたバンド」と語る。

この出会いがなければ、きっと今日のGREENJAMは存在していないのだろう。

大原さんも普段は聞くことがないという、コザック前田さんのGREENJAMへの思いと、今の音楽活動への向き合い方を対談形式で聞いた。

ガガガSP コザック前田さん(株式会社エル・ディー・アンド・ケイ提供)

ガガガSPをライブハウスで見た衝撃から音楽の道へ

大原:中学生の時に、先輩に連れられて初めて行ったライブハウスで見た時、1組だけなんか違うバンドがいたんですね。当時はハイスタ(※Hi-STANDARD。90年代後半に日本のインディーロックシーンで絶大な人気を誇ったバンド)の名残もあって、メロコアブーム。その中で、下駄履いてなんかワーワー言うてるバンドがいる。それがガガガSPで、のちに青春パンクって呼ばれるシーンを引っ張るんですけど、当時はそのちょっと異端なところに惹かれました。

前田:あの頃は周りがもう、英語でやるバンドばっかりやったんですよ。日本語でやるだけでもちょっと恥ずかしいとか言われている時代。バンド名も英語にしないとカッコ悪いみたいなこと言われたりはしていたんですけど、そこをカタカナにしたり、あえてちょっと時代と違うことをやりだした頃だったと思いますね。

大原:反骨精神というか「俺たちはこうする」みたいなのが、当時ガガガSPを見て、ガーンと衝撃を受けた。あのライブを見たことが、自分がバンドを組んで音楽を始めるキッカケだったんです。

それで、高校に上がった後に、ガガガSPがゲスト出演していた「高校生は修行編」っていう、高校生バンドをケチョンケチョンにする(笑)というイベントに出演しました。

前田:何も悪いことしてないですよ(笑)

あの当時、神戸にはうちのバンドがキッカケでライブハウス行き始めたっていう高校生の子とかが多かったと思うんですけど。

大原:それで、ガガガSPがメインの箱とした神戸スタークラブ(※神戸のロックシーンを支えたライブハウス。2016年閉店)が憧れだったから、デモテープを送って、そこから出演させていただくようになって。そこで、のちに僕が自分でもフェスをやってみたいと思うキッカケにもなったcomingKOBE(カミング神戸 ※阪神・淡路大震災からの復興支援への感謝を込めて毎年春に神戸で開催されるチャリティーフェス)の松原さんに出会うんです。(※松原裕氏。カミング神戸とライブハウス「太陽と虎」を支えて、神戸の音楽シーンを牽引した。2019年病気のため死去。)

ーコザック前田さんが、大原さんのことをはっきりと認識されたのはいつのこと?

大原:やっぱり憧れの人に認識されたタイミングっていうのは、喋りかけた側がめちゃくちゃ覚えているんですね。スタークラブで僕らが出演させてもらったライブの時に、たまたま前田さんが来てはったんです。

本番終わりに前田さんが話しかけてくれはって、「自分らポップやな」みたいなこと言われた。「そうっすかね」みたいな感じで。

そこで、「前田さん、僕らのことを覚えていますか。高校生の時に対バンしたんです」と言う話をして。

そしたら前田さんが、その前日に当時のライブVHSをたまたま見ていたみたいで、「あ!あのライブビデオで、頭がボンバーヘッドの奴、お前か!」みたいに言ってくれて。

前田:はははは!

大原:そこから気にかけてくださるようになって、(ガガガSPの)「青春狂時代」っていうアルバムツアーを一緒に回るか、みたいな話を提案してくださって。

前田:大原は自分のバンド組み出してから、僕らみたいなタイプの音楽やっていなかったけど、いろんなバンドと一緒にやってみたいというのもありましたし、よく飲みにも行っていたんで、ツアー一緒にやろかって。

大原:今でも覚えているんですけど、前田さんから急に電話あって、「板宿(神戸市須磨区)で飲んでるからけーへん?」みたいな感じで。

遠いなあと思いながらバンドメンバーと一緒に行ったら、ガガガSPメンバー全員で、どういう流れだったか知らないですけど、「もう解散や!」みたいな話してたんですよね。酔っ払いながら。

前田:そんな話してた!?はははは。

大原:そういう、半分嬉しい、半分迷惑みたいな気にかけ方をしてくれたんです(笑)。

僕に子どもができて、バンドを解散することになった時も、comingKOBEの楽屋で「解散することなりました」って報告して。そしたら前田さんが、「いや結婚しても子どもできてもできてるやろ!」みたいなこと言われたんですけど、前田さんその後離婚してるんで、やっぱり解散してよかったと思って(笑)。 

前田:はははは!あかんね、あかんね。

大原:でも、そんな風に言ってくれたのが、めちゃくちゃうれしかったですね。

ITAMI GREENJAM提供

「今ならGREENJAMに出てもらえる」と思ったタイミングで、満を持してオファー

―その後、GREENJAMで、主催側と出演アーティストとして再会される。

大原:バンド解散がきっかけで神戸界隈から離れるので、一旦は疎遠になって。

もちろん、個人的にはガガガの活動は追っていました。

それで、自分がフェスをやるとなった時に、もちろん、ガガガSPは(出演アーティストとして)頭に浮かぶわけです。でも、やっぱりGREENJAMは地域の、まちのフェスなんで(ガガガS Pのようなパンクバンドを呼んで)大丈夫なんかなっていう不安がありまして。それは、ステージングって意味でも、お客さんのノリっていう意味でも。

だから、最初はちょっと怖いなと思いつつ、このぐらいの(激しさの)バンドやったら、お客さんはどんな感じになるんだろうって、毎年色々見ていたんです。

前田:段階を踏んでたんや。

大原:そうなんです。そんなことを試しているのと同時並行して、ガガガSPのライブも見に行っていて。

僕は、ガガガSPが、いい意味どんどん肩の力が抜けてきている感じに変わっているなっていうのをすごく感じていて。

前田:うん、うん。

大原:あ、今ならGREENJAMに呼んでやってもらえるかもと思って、オファーして出ていただいたんですよね。それが2019年。

その時に僕、前田さんにめちゃくちゃ救われたんすけど。

前田:ほう。

大原:結局、2019年の最初の出演時の1曲目「線香花火」のイントロで、(お客さんの中で)ダイブとモッシュが起こったんです。「あ、起こってもうた」と思ってステージ上からそれを見た時、そのモッシュ・ダイブしてるやつが僕の高校の同級生だったんです。

そいつにガガガSPを教えたのは、僕なんですよ。高校生の時、休み時間に廊下でガガガSPを流して、モッシュ・ダイブしとったんです。

前田:はははは!

大原:時を経て、僕が立ち上げたフェスにガガガがSP出て、同級生のそいつがそこでモッシュしてるっていう光景に僕が持っていかれてしまって(笑)。主催者としてほんまは止めないとあかんのに。

前田:はははは!

大原:何かそんな躊躇が一瞬あって、「アカン!止めな!」と思ったタイミングで、前田さんがステージで上で止めてくれたんです。「ちょ、ちょ、あかん!」って。

前田:ステージ前にちょっとオブジェみたいなのがあって、その子は別にケガしたとかいう感じでもなく、喜んで手挙げてたりしてたんですけど、それ見てちょっとこれは危ないなと。

「お前らタダで見に来てんねやから、それだけは抑えろ!」、みたいな、そんな感じやったと思います。

ITAMI GREENJAM提供

GREENJAMは、まちの人たちが本気で作り上げているフェス

―ご出演されて、GREENJAMの印象はいかがでしたか?

前田:フェスと言っても、規模とかも色々ありますし、どのぐらいのものかなっていうのがあったんですよね。

いざ行ってみたらめちゃめちゃ規模がでかくて、本気で作り上げてきている。それもまちの人たちと一緒に。

あと、ステージの作り方とか、ちょっとサイケな作りにしてあるやんか。

ComingKOBEとは全然趣旨の違うイベントなんですが、逆に言うとGREENJAMの方がロックフェスっぽいなという印象で、何かうれしかったですね。

それだけ一般の人とか、ほんまにフラっと見に来た人とか、「あ、ガガガSPか」「15年くらい前にようライブ行ってたな」みたいな感じで見てくれる人もいる。

あと、別のステージでは子どもがダンスしていて、親御さんがそれを記念に見に来るっていうようなこともあったりして、町と地域と、すごく密接に関わっているんだなっていうのは、初めて出た時に会場のいろんなところを回って感じましたね。

大原:前田さんが会場をふらっと回って見てくださっている。あの光景を見て、嬉しかった記憶があります。

前田:今日もイベンターの人と喋っていたんですけど、これからはだんだん、街フェスとかの方が楽しくなってくるんじゃないかっていうような話をちょうどしていたんです。

街フェスっていうのが、ここ数年でめちゃくちゃ増えた。それを本当に最初の頃にやり始めたのが、GREENJAMじゃないかなと思うんですよね。

それも、どの出店にしても、ダンスなんかのステージにしても、どこのブースにしても手を抜いてない感じがあるんです。熱量を感じましたね。

大原:GREENJAMのように、プロではない市民たち、ある種の素人が文化祭的に作るっていう方が、エネルギーだけでいくと実はプロに勝っているんじゃないかなと思っていて。多くの人がタスクではなくやっているというか。

そういうところが、前田さんがおっしゃってくださった「手を抜いていない」みたいな印象に繋がっているのかなと思いました。

前田:逆に言うと、無料だからできることでもありますし、(今年初めて導入された)有料のエリアって言っても500円ですしね。

あれだけのメンツ揃えたら、500円ぐらい払えって話ですよ(笑)。

うちも困るからね、ブルーハーブの後にやんのかって(笑)。

この前、梅田サイファーのCosaqu(コーサク)くんとご飯食べに行って、「GREENJAM楽しみやね」って話をしていて。タイムテーブルが発表された日やったんやけど、「(ガガガSPと梅田サイファー)別の日やん!」って(笑)。

でも、何かとGREENJAMが話題に出る。

ITAMI GREENJAM提供

ライブハウスを離れていた人が、再びガガガSPの音楽を聴く機会に

―無料や500円という安い価格の入場料の設定に、プロのミュージシャンとしてはネガティブなお気持ちはないですか?

前田:いや、それはないですね。逆に無料にすると強い面もある。

うちのバンド的なところなんですけど、やっぱり20年ぐらい前とかにライブハウスを離れた人とか子どもができて家庭持ったりとか、自分の生活環境が変わったりとかしてライブハウスを離れていた人が、久々にうちの曲を聞く機会にもなるんです。

だから逆にうれしいこともありますね。

先日も苫小牧の無料フェスに出たんですけど、昔、20年前に見たぞっていうような顔の人とかが来ているんですよね。それで20年前のTシャツを着ていて、もうおじさんになっているんで、ピチピチなんですよ。僕も会場をウロウロするんで、(そういう人と)ちょっと話せたりとかして。

兵庫県だとこういうフェスはGREENJAMからかなって印象がありますね。

反応よく聞いてくれる方もすごく多いです。うちみたいな音楽に普段は触れることはないだろうなという人が、真剣に聞いてくれているし。一挙手一投足をすごく見てくれているっていうのは、やっぱりうれしいですよね。

大原:(入場)無料の強さみたいなところは、結構、当初から意識しています。

僕の視点では、ガガガSPは今が一番かっこいいと思っているんですけど、でもやっぱり失礼を承知で言うと、多くの人にとって、なんか懐メロみたいな感じで捉えられてしまう。

前田:うん、うん。

大原:それはそれで別にいいっていう風に多分、今の前田さんは捉えてはるとは思うんですけど、今のガガガSPが一番かっこいいと思っている僕からしたら、「いや、今のガガガを見てくれ!」って思うわけです。

「ライブハウスに行って見てくれ」は無理だけども、GREENJAMのようなフェスなら見てもらえるし。

当日、それこそ20年前にガガガSPを聞いていた人たちが、今のガガガSPを見て、シンガーソングしてるとか、手を挙げてるとかっていう、やっぱりあの風景はすごくうれしいですね。

ITAMI GREENJAM提供

「活動が狭まっていくのでは」という思いからプラスに好転〜「もう1回売れようと思う」

大原:一時期、多分前田さんが、良くも悪くも、無力というかフラットというか、「俺らは俺らなりのやり方していく」みたいな感じのスタンスだったんですけど、今年のcomingKOBEのステージで、前田さんが「もう1回売れようと思っている!」って言ったんですよね。それがめちゃくちゃ嬉しくて。

前田:ちょうどバンドもいろんなことがあった時期なんですよね。

これも、ぶっちゃけの話なんですけど、僕らももう懐かしむ人しかいないんじゃないかみたいな。大原が言った通り、懐メロとしての扱いで、そうやってちょっと呼ばれたところに出て行くぐらいしかないんじゃないかっていう。

活動がどんどん狭まっていって、言ってしまえばパンクも演歌みたいになってくる部分もあるんで、そんな風に、か細くなっていくんじゃないかなっていうような、ちょっとマイナスの話をし始めていた時もあったんですけど。

どうせなら、もう1回プラスに転じて、いろんなことを全部受け止めてやってみようかみたいな感じに逆になったんです。

ほんなら、もう1回上を狙うって、そこまで思っているかって言ったら、そうでもないんですよ。でも、自分のことを知ってもらう貪欲さは持ってライブに挑みたいなっていうふうに思うようになって、それで、懐メロでも何でもいいし、思い出すって感覚でもいいから、とりあえずやっぱりもう1回、息を出してやろうみたいになったんですよね。

そこから結構、僕もライブに対する思いっていうのが、この数年よりは変わってきたなという意識はありますね。

大原:僕個人の視点でいくと、更新し続けているガガガSPを、1人でも多くの人に見てほしいっていうので、ずっとオファーしているので。

その気持ちと、ガガガSP自体の活動の指針みたいなところが、今年合致しているんであれば、すごいライブを見られるんじゃないかな。楽しみです。

前田:ははは。そんなん言うて、めっちゃしくじったら、あほやんね。

ITAMI GREENJAM提供
―今年来てくださるお客さんにメッセージをお願いします。

前田:今の自分自身のモチベーションと、今回ね、会場が(伊丹に)戻ったっていうこともあって、すごく楽しみにしています。

前日にセックスマシーンとのツアーが静岡であるんですけど、そっちはだいぶ力抜いてやろうかなと(笑)。いや、それは冗談ですけど(笑)。

ライブが3連チャンで、ここ数年やったら3日目が大分しんどかったんですけど、連チャンでもだんだん上がっていく、例えば3本目がすごくよくなってきたりする状態があって、すごく自分の中でいい時なんですね。

いいときの状態が戻りつつあるなっていうのは最近感じているんで、いいライブができるかなと思います。

皆さんGREENJAMもいろんな楽しみ方があると思うんですけど、その中でも、音楽としてはうちのバンドがトリになるので、GREENJAMがすごく良かったなと総括して思ってもらえるようなライブができたらなと思っております。


ITAMI GREENJAMウェブサイトより

ガガガSP(18日出演)

唄い手 コザック前田
ギター弾き手 山本聡
ベース弾き手 桑原康伸
叩き手 田嶋悟士

1997年、地元神戸にて結成。
唄い手コザック前田のルーツであるフォークをパンクというフィルターに通し全く新しいパンクを誕生させ、2000年12月「京子ちゃん」で衝撃的なデビューを果たす。

その後、驚異的なスピードでパンクキッズ達の心を掴むと2002年1月「卒業」でメジャーデビュー。
一気にシーンの中心に躍り出る。

2007年、自主レーベル「俺様レコード」を設立。
2008年にはガガガDX名義でのカバー「にんげんっていいな」(日産セレナTVCM)が着うた100万ダウンロードを記録し話題に。

地元神戸では主催フェス「長田大行進曲」の開催など、神戸のバンドシーンにおいて、唯一無二の存在感を魅せている。

結成から25年経つ今でも、幅広い年齢層においてその村債は知られており、昨今のバンドシーンの中でも彼らの楽曲に影響を受ける者は数多く世代を越え支持されている。

デビュー以来、地元神戸に拠点を置き、全国各地のライブハウス、大型フェスなどで圧倒的熱量のライブを繰り広げている。

(ITAMI GREENJAMウェブサイトより)


ITAMI GREENJAM’23

2023年9月17日(日)・18日(月祝)

会場:昆陽池公園

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企画制作:GREENJAM実行委員会
主催:一般社団法人GREENJAM

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