公開日:2025年02月02日
昨日2月2日(日)、アイホール(伊丹市立演劇ホール)で2月3日(月)まで上演中のニットキャップシアター25周年記念公演『さらば、象』を観ました。
「これは、とっても伊丹なお話」ニットキャップシアター25周年記念公演『さらば、象』が1月31日(金)からアイホールで
終演後は、アフタートークにも参加させていただきましたが、公演の感想やアイホールのことについて、 胸がいっぱいで、そのとき言えることは言ったものの、なにからなにをどう言えばいいのかというくらい、終わってからまだまだ伝えたいことがあった……と思ったので、リポート記事を書くことにしました。(書いたあとまた思い出すかもしれないですが笑)
アイホールでこれまで何度も公演を行った劇団「ニットキャップシアター」の25周年記念公演。アイホールや伊丹に心を寄せていただいているからこその、本当にとてもよい公演で、おもしろくてせつなくて胸が熱くなって泣けました。
演劇ファンはもちろん、演劇をちゃんと観てみたかった、ひさしぶりに観ようかなという方、アイホールの存続問題に関心があった方は是非とも、そしてなにより、演劇は興味ないのよねという方でも伊丹のひとには是非観てほしい、アイホールがなくなる前に本当に…と思わずにおれませんでした。
お芝居そのものも、脚本、演出、主演の髙安美帆(エイチエムピー・シアターカンパニー)さんやほか役者さんたちの熱演が素晴らしく、とても心を動かされました。
物語では、移りゆくときの大きな流れの中に自分はただいるだけなのだということや家族の中の自分、家族との関係性を考えさせられ、終盤に出てくる高安さんのあるセリフにははっとしました。
また、劇伴として生演奏が入っていて、それがとても効果的でした。お芝居は生ですから、BGMや効果音も生で、というのはトーンが同じで一体感が増し、より情景や心情が浮かび上がります。伊丹のイベントに長年よく来ていただいているウクレレ&ギタープレーヤーのおがわてつやさんのつくられた音楽、生演奏はぐっときました。(おがわさんは役者としてお芝居もされていましたが、思っていた以上に出られていてびっくり!笑)
そして、スタッフクレジットに、マイム指導としていいむろなおきさんの名前があったので気になっていましたが、その演出も利いていてなかなかにすごい。限られた空間、セットの中でこその表現を楽しめるのも演劇の魅力だと感じました。
音楽も、音源やライブ映像では感じられない良さや感動が生ライブにはあると思っている方は多いはずで、演劇も、映像で観るお芝居にはない魅力がたくさんあります。
同じ空間で、そこにいる生身のひとが演じている、その発せられるエネルギーを感じ、役としてのひともその役者さん自身もダイレクトに感じられ、観客が反応し、その反応が舞台上の役者さんにも伝わる。そこからまた生まれるものがある。だから演劇はおもしろいのだと、同じ芝居をしていても、発するエネルギー、表現はその日そのときだけのもの。観客も違えば反応も変わるしそれによう空気感も変わる、それが演劇の醍醐味だと改めて思いました。
アイホールやほかの場所で、これまで演劇は時々観ていたこともあり、演劇の魅力はそれとなくわかっていたつもりでしたが、昨日は、アイホールでの上演とあって、アイホールや伊丹に縁があるという方々を中心に、つくられているみなさんの想いが込められたこのお芝居に、より一層感じられるものがあるのです。
アイホールの演劇ホールの設備はやっぱり素晴らしく、それが活かされた演出もあり、とあるシーンのある演出ができるアイホールの仕様には、「アイホールのあれはほんとうにいいらしい」という言葉も聞き、この唯一無二のアイホールがなくなるのは本当に残念……と思いました。
関西屈指、小劇場の拠点「アイホール」終幕 伊丹で37年、関東の劇団との交流の場にも 25年度末閉館(神戸新聞/2024年11月26日)
伊丹は文化芸術が間近に身近に感じられるまちで、それは、アイホールやほかの複数ある公共施設のおかげもあって、そこからまちやまちのひと、市民や事業者との連携や協働も生まれ、文化芸術やそれにまつわることが、日々起こっているからだと思います。
アイホールについても、演劇に係るひとたちから高い評価を受け、愛されているアイホールがあることが伊丹の誇りであり、アイホールがあるから伊丹を知った、伊丹に来た、伊丹のまちを歩いたというひとたちがいてくださることがどれほどありがたいことかという気持ちでいました。
アイホールの価値については、市民の利用率という評価軸も重要視されたと聞きますが、いかなることも評価軸はひとつではなく、価値や意義には多面性があり、数字、数値でしかわからないこともあるけれど、それ以外の目に見えづらいことに本質があることもあります。それぞれなにを重視するかも異なると思うので、アイホールについても、違う評価軸でのことはどう評価されているのかなと思っていました。
もちろん、アイホール自体の運営のこともあると思いますが、ただそれと並行して、市外県外から来てくれるひとたちにとっても、まちにとっても、よくなるようなこと、まちとの連携を強めたり、もっと早くから中長期的な目線でアイホールが生んでいるメリットを活かした策を取ることで課題解決へと繋げることができていたら……と、問題が表面化され私たちが認識したあの「アイホール問題」が起こる前に、伊丹で活動している者として微力ながらもなにかできることがあったのではないか……と今更ながら思います。
アイホールのこと、アイホールがある伊丹のまちのこと。「もう残らないよね」という諦めから少し気持ちがトーンダウンしていましたが、今回の公演は、それらにまた思いを馳せるきっかけになりました。
このタイミングで観られたことは本当によかったし、自分が暮らすまちのこと、文化芸術とまちのこと、公共施設とまちのこと、そして自分とそれらのこと、色々考えさせられました。
終了後来場していた友人知人の方々との話の中で、「これはみんな観たほうがいい」「再演してほしい」の声もありました。
でも、アイホールのこと、アイホールがある伊丹のまちのことに興味はなくとも、演劇そのものを楽しめます!
公演は2月3日(月)まで。前売券は残り僅かだったり完売だったりしています。ニットキャップシアターの公式Xで確認してくださいね。
公演詳細や公演にまつわるお話はこちらの記事を是非ご覧ください。
そして、友人の益田さん(当日配布されるプログラムにもお名前あり!)が企画提案され展示が決まったミニ写真展「象が歩いた道〜’70大阪万博の記憶〜」も要チェック!益田さん、171号線が通っている市の方から写真を集めたそうです。
象が171号線を歩いた話は聞いていましたし写真も見たことはありましたが、こんなには見ていませんでした。象が神戸から吹田まで歩いた、か武庫川で休憩したってすごいですよね!ロマンを感じます!
ロビーに設置されていて、これは公演を観られない方も観ることができますので是非。
Written by Takako Kashima